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昔の新聞点検隊

1924〈大正13〉年4月12日付東京朝日夕刊2面拡大1924〈大正13〉年4月12日付東京朝日夕刊2面。画像をクリックすると大きくなります。主な直しだけ朱を書き入れています。現在の朝日新聞の表記基準で認めていない漢字の音訓や、当時は入れていなかった句点を入れる等については、原則として記入を省いています

【当時の記事】

今日から小金井駅 臨時に設置

東京鉄道局では十一日午後一時から中央線武蔵野国分寺両駅間に臨時に小金井駅を開始し観桜客の便を計ることとなった なほ小金井の桜は二十日頃に満開の見込で四月末までは今後一日往復十六回の運転をなし、二十日の第三日曜には特に五分毎に運転する由

(1924〈大正13〉年4月12日付東京朝日夕刊2面)


【解説】

 春らんまん。西日本や関東地方では桜が咲き誇り、見頃を迎えています。すでに花見を楽しまれた方も多いのではないでしょうか。

 3月25日更新の「春だ!花見だ!臨時列車だ!」では花見に備えて臨時列車を出した、という記事をご紹介しました。今回はその続編。花見に備えて臨時に「小金井駅」を造った、という記事です。

題字下は「十一日」となっている拡大記事1 紙面の欄外(上の端)には「大正十三年四月十二日」とあるが、題字下(赤で囲った部分)は「十一日」となっている=1924年東京朝日夕刊1面
 まずは点検。「今日から小金井駅」の見出しの後に、駅の営業が始まるのが「十一日午後1時から」とあります。あれ? 12日付の紙面なのに11日が「今日」?

 実は1943(昭和18)年までは夕刊は翌日の日付で発行していました。ですから12日付のこの紙面は11日に発行されています。紙面の欄外(記事が入っている大きな枠の上)には「四月十二日」とありますが、この日の1面の題字下は「十一日」となっています=記事1。ややこしいですね。

拡大「小金井桜」は小金井橋を中心に、玉川上水沿いに植えられていた
 「小金井駅」は武蔵小金井駅のこと。設置された場所が「武蔵」と国分寺の間とあるのは、「武蔵」と国分寺の誤りのようです。

 ちなみに今、武蔵境駅と武蔵小金井駅の間にある東小金井駅ができたのは1964(昭和39)年。この記事の時にはまだありません。

小金井橋のたもとにたつ「名勝小金井桜」の碑拡大小金井橋のたもとにたつ「名勝 小金井桜」の碑。左は五日市街道
 臨時駅を造るほど人が集まったのは、「小金井桜」があったため。小金井橋を中心に、玉川上水沿いに植えられた山桜です。江戸時代から広く知られた花見の名所で、1924年12月に国の「史跡名勝天然記念物」に指定されています。

 今も小金井橋のたもとには「名勝 小金井桜」の碑がたっています。

1928年3月15日付東京朝日夕刊2面拡大記事2 1928年3月15日付東京朝日夕刊2面
 1928(昭和3)年の紙面でこんな記事を見つけました=記事2

桜の名所番付 鉄道省で作成

 (前略)同(=鉄道)省の旅客課では先頃から全国の桜の名所番付を造る計画を立ててゐたが苦心の後全国八十二の名所を選び、この程漸く出来上った、行司は嵐山(京都)および吉野山(奈良) 大関は三里塚(千葉)および開盛山(福島) 関脇は小金井(東京)および加治川(新潟) 小結は鹿島旭岡(佐賀)熊谷土手(埼玉) 前頭筆頭は篠栗新吉野(群馬)および宮川土手(和歌山)である

 (1928〈昭和3〉年3月15日付東京朝日夕刊2面)

 小金井桜が関脇に挙げられています。3月25日更新の記事でご紹介した「熊谷土手」も小結に出てきます。京都・嵐山、奈良・吉野山は今でもよく知られていますね。ほかは以下の場所のようです(一部推測も含みます)。

 大関・三里塚=千葉県成田市の御料牧場。現在は成田空港になっています
 大関・開盛山=福島県郡山市の開成山公園
 関脇・加治川=新潟県新発田市の加治川堤
 小結・鹿島旭岡=佐賀県鹿島市の旭ケ岡公園
 前頭筆頭・篠栗新吉野=群馬ではなく、福岡県篠栗町の新吉野公園?
 前頭筆頭・宮川土手=和歌山ではなく、三重県伊勢市の宮川堤?

 この記事、一番上が「横綱」ではなくて「行司」なのも興味深いですね。「相撲で一番強い力士は横綱」というのがまだ共通認識になっていなかったからでしょうか。

 

 こんなに人々に親しまれた小金井桜も、玉川上水の水量が減ったり、並行して走る五日市街道の車の排ガスが影響したりして多くが枯れてしまいました。一方、戦後玉川上水のすぐ北側に小金井公園が整備され、今ではそこの約1700本の桜が小金井桜に代わって多くの花見客を集めています=写真

小金井公園は今年も多くの花見客でにぎわっている拡大小金井公園は今年も多くの花見客でにぎわっている=4月7日

現在の武蔵小金井駅拡大現在の武蔵小金井駅
 枯れてしまった小金井桜は、地元の人たちを中心に、復活の試みが続けられています。

 花見のための仮の駅だった武蔵小金井駅は、今では周辺には住宅や店が立ち並び、1日平均5万7906人が乗降する大きな駅になっています(2012年度、JR東日本調べ)。


【現代風の記事にすると…】

武蔵小金井駅 臨時に設置

 東京鉄道局では11日午後1時から中央線武蔵境―国分寺間に臨時に武蔵小金井駅を開設し、花見客の便宜を計る。なお玉川上水沿いの小金井の桜は20日頃に満開の見込み。中央線は4月末までは1日16往復運行し、混雑が予想される20日の第3日曜には5分ごとに運転するという。

(山村隆雄)

当時の記事について

原文どおりに表記することを原則としますが、読みやすさの観点から

  • 漢字の旧字体は新字体に
  • 句点(。)を補った方がよいと思われる部分には1字分のスペース
  • 当時大文字の「ゃ」「ゅ」「っ」等の拗音(ようおん)、促音は小文字に

等の手を加えています。ご了承ください