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昔の新聞点検隊

選挙で決めた教育委員

1948(昭和23)年10月3日付 東京本社版朝刊3面拡大1948(昭和23)年10月3日付 東京本社版朝刊3面。画像をクリックすると大きくなります。主な直しだけ朱を書き入れています。現在の朝日新聞の表記基準で認めていない漢字の音訓や、当時は入れていなかった句点を入れる等については、原則として記入を省いています
【当時の記事】

明後日は教育委員選挙 棄権防止に懸命 当局 最後の呼びかけ

初の教育委員選挙は明後五日に迫り、一般の関心を高めるため当局は棄権防止の宣伝にやっきである、文部省では長さ八間幅一間の「十月五日は教育委員選挙の日」のノボリを二日につくった、文部省の屋上からブラさげるという、また運輸省に頼んで全国各駅のマイクから乗客によびかけているが、東京都でも省線や私鉄の車内にビラを下げ、都電、都バスの横腹に幕をかけるなど、街のところどころには文部省、都、日教組のポスターが仲よく並んでいる

 (1948〈昭和23〉年10月3日付 東京本社版朝刊3面)

 
【解説】

 今回は「教育委員」について書かれた記事を取り上げます。まずは校閲。

 「長さ八間幅一間」は、今ならば「長さ約15メートル、幅約2メートル」とメートル表記にするところ。

 「十月五日は教育委員選挙の日」のノボリ、というくだりはどうでしょう。一緒に掲載された写真と比べると、「の」が抜け落ちている可能性があります。また、本文では「ノボリ」、写真説明では「のぼり」と不ぞろい。念のための確認と、表記の統一を求めます。

 「文部省の屋上からブラさげる」の「ブラさげる」も気になります。片仮名と平仮名をまぜる特段の事情がなければ、「ぶらさげる」としてもらいます。

◇  ◇  ◇

 今では、多くの人にとって知らない間に決まっている教育委員。でも、その昔は、住民が選挙で直接選んでいました。

 日本では戦後、様々な改革が進みます。教育の民主化も、その一つ。政治と一体化して軍国主義教育に走った戦前の反省から、1948年、教育委員会法が成立。各自治体に、首長から独立した教育委員会が設置されました。

教育委員の選挙の結果を報じる紙面拡大教育委員の選挙の結果を報じる紙面=1948年10月7日付東京本社版朝刊2面
 教育委員を住民が直接選ぶ「公選制」を採用。原則5人の教育委員が、教員人事や使用する教科書など教育に関する方針や施策を合議で決めることになりました。冒頭の記事は、選挙が間近に迫る中、投票を呼びかける動きを報じたものです。

 右の画像は、冒頭の記事から4日後に掲載された紙面。「当選者」「開票結果」という見出しに続き、教育委員に選ばれた人たちの得票数や顔写真、略歴が並んでいます。まるで、議員選挙の結果を報じる紙面のようですね。

◇  ◇  ◇

 東西冷戦を背景に、時代は再び動きます。共産党員らを職場から追放したレッドパージ、警察予備隊(後の自衛隊)創設、公職追放解除……。戦後民主主義を否定するような、いわゆる「逆コース」です。

 56年、地方教育行政法が制定されます。教育委員は「公選制」から、自治体の首長が議会の同意を得て命じる「任命制」に変わりました。

 公選制のもとでは、教職員組合や政党の関係者が多く当選。政治的対立が教育に持ち込まれるという弊害も出ました。住民たちが選挙で直接、教育委員を選ぶ形は、導入から8年で終わります。

◇  ◇  ◇

 教育委員が「公選制」から「任命制」となって、半世紀以上。制度が再び変わろうとしています。

 今年4月、安倍政権は地方教育行政法の改正案を国会に提出。自治体の首長が直接、教育長を任命・罷免(ひめん)できるようにするなど、教育行政に対する、首長の権限を強める内容です。

 「首長がリーダーシップを発揮することで、様々な問題に迅速に対応できる」など肯定的な声の一方、「首長が自らの考えに近い教育長を選び、教育委員会は形骸化する」と懸念する声もあります。

 昨年暮れ、特定秘密保護法が成立。これまで積み上げてきた憲法解釈を変更し、集団的自衛権の行使を容認することも検討されています。

 時代の大きな曲がり角に、立っているのかもしれません。この国は、いったい、どこへ向かおうとしているのでしょうか。


【現代風の記事にすると…】

投票まであと2日 懸命の呼びかけ 教育委員選挙

 初めての教育委員選挙まで、あと2日。文部省は「十月五日は教育委員の選挙の日」と書かれた垂れ幕を作製。同省の屋上からぶら下げる。

 全国の駅では構内放送などで啓発。東京の省線や私鉄の車内にはビラが掲げられ、車体に横断幕を張った都電や都バスも。あの手この手で、投票を呼びかけている。

(高島靖賢)

当時の記事について

原文どおりに表記することを原則としますが、読みやすさの観点から

  • 漢字の旧字体は新字体に
  • 句点(。)を補った方がよいと思われる部分には1字分のスペース
  • 当時大文字の「ゃ」「ゅ」「っ」等の拗音(ようおん)、促音は小文字に

等の手を加えています。ご了承ください