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昔の新聞点検隊

初の統一地方選「気軽に投票へ!」

薬師 知美

1947(昭和22)年4月3日付朝日新聞東京本社版朝刊2面。画像をクリックすると大きくなります。主な直しだけ朱を書き入れています。現在の朝日新聞の表記基準で認めていない漢字の音訓や、当時は入れていなかった句点を入れる等については、原則として記入を省いています拡大1947(昭和22)年4月3日付朝日新聞東京本社版朝刊2面。画像をクリックすると大きくなります。主な直しだけ朱を書き入れています。現在の朝日新聞の表記基準で認めていない漢字の音訓や、当時は入れていなかった句点を入れる等については、原則として記入を省いています
【当時の記事】

あさって投票日 気軽に出かけましょう 当日は配給も休みです

明後五日は〝四月選挙〟のトップをきる都長官と区長の投票日、投票の要領も前のよりはるかに簡単になっている

◇気軽な投票所

 この前の選挙では一段高い所に選挙長や立会人ががんばり、その下に投票箱が置いてあるので気の弱い婦人などはペコペコおじぎをして恐縮する始末だったが、こんどは選挙長や立会人は平面に配置して両側に追いやり、投票箱を真中にすえるから誰に気がねもなく投票できる

◇入口から出口まで

 (略)

◇盲人も書けるよう

 都長官は黒区長は赤と色別けした用紙を渡されるが、記入はこれと思う人物の名を一つだけ書けばよい、カタカナでもヒラガナでもよく同姓の候補者がいない場合は姓だけでよい、盲人は点字器が用意してある、一枚に都長官と区長とを連記すれば無効

◇投票は近所隣をさそい合わして

 選挙当日はお米その他の配給も休み、投票所付近には託児所もできるから、近所をさそい主婦も老人も投票しなければならぬ

(1947〈昭和22〉年4月3日付朝日新聞東京本社版朝刊2面)


【解説】

 今年は、4年に一度の統一地方選挙の年。4月に地元で何かしら選挙があるという方も多いのではないでしょうか。今回は、4月12日に道府県知事と道府県議、政令指定市の市長と市議の選挙、そして26日にはそれ以外の市町村の首長と市町村議、東京の区長と区議の選挙が行われます。

 統一地方選は、全国的に期日を統一して行われる地方自治体の首長や議員の選挙で、今春が18回目です。第1回は、戦後間もない1947(昭和22)年。今回はこのときの記事をご紹介します。

 日本の選挙制度の移り変わりを振り返ると、25(大正14)年に衆議院議員選挙が、翌年に地方議会議員選挙が男子普通選挙制(25歳以上の男子に選挙権)となり、45(昭和20)年の改正選挙法によって女性の参政権が認められます。そして46(昭和21)年の地方制度改革で、それまでは国が選んでいた知事を住民の直接選挙で選ぶことになり、この47(昭和22)年の統一選で「初の民選知事」が誕生しました。この歴史的選挙となる知事選、市区町村長選の4月5日の投票日まであと2日と迫った日の記事です。

 冒頭の「四月選挙」とは、47年4月、知事、市区町村長、県議会、市区町村議会の選挙のほか、衆院選と参院選もあり、地方選挙と国政選挙が1カ月の間にすべて実施されるという異例の選挙でした。「大切な選挙に日どりをまちがったりすることのないよう」と、別の日の紙面には選挙期日のカレンダーも載せています。東京向けのこの記事では「都長官」とありますが、「都長官」は今の都知事のこと。選挙後の5月施行の地方自治法で「都知事」となります。

「間違えぬよう」にと選挙期日を一覧にしたカレンダーも掲載=1947年4月4日付朝日新聞東京本社版朝刊2面拡大「間違えぬよう」にと選挙期日を一覧にしたカレンダーも掲載=1947年4月4日付朝日新聞東京本社版朝刊2面

 では、記事を点検していきましょう。「この前の選挙」では、選挙長や立会人はおそらく地域の有力者だったのでしょうか、「気の弱い婦人」が恐縮してペコペコおじぎせずにいられなかったとあります。「前の選挙」とは? 47年以前に女性が投票する機会はあったかどうか。すかさず調べると、戦後初の衆院選が前年の46年4月にありました。20歳以上の男女が投票する普通選挙はこれが初めてでしたので、「前の選挙」があったということで大丈夫ですね。ちなみに参議院は、記事にある47年4月が第1回選挙でした。それまでの貴族院は、参院選後に日本国憲法施行によって廃止されます。

 女性が「恐縮する始末」だったので、選挙長たちを「両側に追いや」ったというのは、とくに誰かを傷つける表現とは言わないまでも、淡々と書けばいいと思いますので、「一段高いところから投票する有権者を見つめて威圧感を与えて緊張させていた選挙長や立会人の席は、同じ高さにして遠ざけた」でどうでしょうか。

学校や公会堂だけでは投票所が足りず、「フロ屋を三軒も借りた」とある=1947年3月17日付東京本社版朝刊2面 拡大学校や公会堂だけでは投票所が足りず、「フロ屋も借りる」とある=1947年3月17日付東京本社版朝刊2面
 後半部分に出てくる「色別け」は、今だと「色分け」と書きます。「ヒラガナ」をカタカナで書くのも変なので、「カタカナでもひらがなでも」に。最後の「主婦も老人も投票しなければならぬ」は、当時の記者は何げなく書いたのかもしれませんが、「女性や老人は行かなくてけしからん」と言っているようにも受けとれるため、性別や年代で分けずに「みんなで」としてもらいましょう。

 ところで記事によると、都内の投票所には目の不自由な人向けに点字器が用意されていたり、近くに託児所もあったりしたようです。

 また、3月の記事では、東京では投票所が学校や公会堂では足りず、「フロ屋も借りる」とあります。政府は投票日を避けて食糧の配給を繰り上げ実施し、官庁は半休にして企業もそれにならうよう求めるなど、投票率アップのためにさまざまな方策を実施したようです。

 統一地方選を行うのは、国民の選挙への関心が高まり投票率が上がりやすいこと、選挙経費が抑えられることの二つが大きな利点とされています。

 しかし、地方選挙全体のうち統一選で行われる選挙の割合を指す「統一率」は、この第1回が100%だったのに比べ、前回2011年は27.40%に下がっています。市町村合併や、任期途中で首長が交代したり議会が解散したりといった理由で選挙時期がずれる自治体が徐々に増えたためです。

 投票率も、11年は道府県議選で48.15%と戦後最低を記録しました。ただ11年は、3月に東日本大震災が起こった直後でした。とくに被害の大きかった岩手、宮城、福島の県議選をはじめ、3県を中心に60の選挙が延期され、街頭演説や選挙カーの使用が控えられるなどしたことも投票率に影響したと考えられます。

 第18回となる今春の統一選では、「地方創生」などが大きなテーマになりそうです。国政選挙に比べて派手さはなくても、私たちに最も身近な選挙です。これからの地域社会はどの方向をめざしていくのか、考える機会にしたいですね。


【現代風の記事にすると…】

あさって投票日 気軽に投票へ行こう 当日は配給も休み

 5日は「4月選挙」の第1弾となる都知事選と区長選の投票日。投票方法は、前回よりもはるかに簡単になった。

◇緊張不要の投票所

 前回選挙では、一段高いところから選挙長や立会人が見つめる下に投票箱が置かれ、投票する人を見下ろし威圧感を与えていたが、今回は同じ高さにして席を遠ざけ、投票箱を真ん中に置くので気にすることなく投票できる。

◇投票の手順

 (略)

◇点字器も用意

 都長官選は黒、区長選は赤に色分けした投票用紙を渡される。候補の名を一人だけ書く。カタカナでもひらがなでもよく、同姓の候補者がいなければ姓だけでもいい。目の不自由な人には点字器が用意されている。1枚の用紙に都長官と区長を両方書くと無効になる。

◇投票はみんなで

 投票日当日は、米や他の配給は休み。投票所近くには託児所もできるので、近所同士で声をかけ合って、みんなで投票したいものだ。

(薬師知美)

当時の記事について

原文どおりに表記することを原則としますが、読みやすさの観点から

  • 漢字の旧字体は新字体に
  • 句点(。)を補った方がよいと思われる部分には1字分のスペース
  • 当時大文字の「ゃ」「ゅ」「っ」等の拗音(ようおん)、促音は小文字に

等の手を加えています。ご了承ください