「好物は駅です」

 小欄で、「鉄道もの」についていろいろ書かせてもらっている。以前も述べたが、「鉄道オタク(テツ)」といえば、一般の方々からは「電車が好きなんですね」といわれ、「いや電車は好きではありません」と返答すれば、妙な顔をされる。「じゃあ何が好きなんですか」と問われ、「駅が好きなんです」と答えると、ますます不思議なモノを見るような顔をされる。

 「駅」について、皆さんはどんな印象をお持ちだろうか。まず思い浮かぶのは「通勤・通学」だろう。九州勤務が長かった筆者はいわゆる通勤ラッシュとは無縁で、東京勤務になって初めて、話には聞いていた「列車にまっすぐ立って乗ることができない状態」を経験した。早足で歩く大人数の人々、ホームに鳴り響く発車メロディー、ホイッスル、警告のアナウンス……。今回は「駅」について述べさせていただく。

 さて、「駅」という言葉、「広辞苑」では「列車・電車を停止し、旅客・貨物などの取扱いのために常用される場所」とある。つまり、実用のためのものであり、本来趣味の対象物となるようなものではない。

 裏表紙に「3の1 ひらいかずお」と書かれた1冊の本がある。夕刊フクニチ新聞社編の「福岡駅風土記」(1974年、葦書房)。福岡県のかつての地元紙「フクニチ新聞」連載の駅紀行をまとめたものだ。たまたま実家のそばにあった駅が掲載されていたので手に取り、まだ小学生だったため理解できない部分も多々あったが、興味深く読んだことを覚えている。この本をきっかけに鉄道、なかでも駅というものに興味を持つようになった。

 駅といってもさまざま。例えばJR東京駅などは丸の内口の赤レンガ駅舎が有名なので、イメージがわきやすいだろう。JR新宿駅は「ラッシュ」。1度、しかるべき時間帯に「見学」に行ったことがあるが、テツの自分でも用件がないかぎり行きたい場所ではない。

 時代によってもイメージが違う場合がある。JR大阪環状線の西九条駅は構内の配線が複雑で、テツ心をそそるうえ、駅周辺の雑然とした雰囲気も魅力的だったのだが、現在はこの駅を起点とする桜島線に「JRゆめ咲線」の愛称が与えられ、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンへのアクセス路線となった。ハリー・ポッターやウッドペッカーなどの派手なラッピングトレインが停車して、楽しそうな家族連れが乗っていたりすると、この駅に貨物列車の駅のイメージを強く持っていた筆者はどうも違和感がある。