(7月1日付朝刊に掲載した「ことばの広場」を再録しました)

 以前、このコラムで「転嫁」という漢語の意味を取り上げたところ、それでは「婆」は「人生の荒波を何度もかぶって女は婆になる」という意味なのですか、とのお便りを頂きました。

 おもしろい説なのですが、残念ながらそうではありません。
 古代中国で、おばあさんのことを「ブア」といったため、それに近い「プア」の音(おん)をもつ「波」を用いて「婆」の字を作ったのです。「波」の部分は音と同時に「しわ」の意味を表すという見方もありますが、あくまで一説にすぎません。

 漢字は、意味を表す部分を組み合わせた文字だと思われがちですが、実は音だけを表す部分もたくさんあります。

 もっとも、お便りにあるような解釈の仕方は、中国本土でも古くからありました。北宋の宰相・王安石は「籠」は「竹の中に龍を収めること」で、「波」は「水の皮のこと」だと説いたと伝えられます。しかし、「籠」の「龍」、「波」の「皮」は、「ロウ」「ハ」の音を表す部分です。