(7月29日付朝刊に掲載した「ことばの広場」を再録しました)

 「この犬やばいよ!」と散歩中に言われ、愛犬に何か起きたのかと思ったら、どうも「かわいい」という意味のようだった――など、最近の「やばい」に戸惑う投稿が3通ありました。

 江戸時代後期には「やば」という言葉が見られます。「大辞林」によると「具合の悪いさま。危険なさま。不都合」。一説にはこれが形容詞化したのが「やばい」で、泥棒らが使う隠語だったようです。戦後に若者へと広がったとされており、こうしたことから嫌悪感を持つ方も少なくないのでしょう。

 日本語学が専門の井上博文・大阪教育大教授の学内調査では、1998年には自分にとって危険な状況を表す従来の用法だけでなく、不都合を感じる自分の気持ちや見方も「やばい」で表す例が見られました。これが2010年には、冒頭の例のように肯定的な場面でも多く使われています。05年の文化庁の調査でも、「とてもすばらしい」の意味で使うことがある16~19歳は、男性約76%、女性約66%となっています。