(6月3日付朝刊に掲載した「ことばの広場」を再録しました)


 2016年春卒業予定の大学生向けの企業説明会が真っ盛りです。政府は13年に採用活動を「後ろ倒し」するよう求めました。これを受けて経団連が出した「指針」により、例年より3~4カ月遅いのが、今年の就職活動の特徴です。企業が内々定を出すのも、これまでの4~5月から8月以降にずれ込みます。

 この「後ろ倒し」という言葉、最近は「前倒し」の反対の意味で使われることが多くなってきました。最初は強い違和感があり、「先延ばし」と書くべきだと思ったものでした。

 「岩波国語辞典」の「前倒し」の項を見ると、「『繰り上げ』でも済むのに、一九七三年ごろに官庁俗語として現れたのが、広まった語」と注釈があります。国会議事録では後ろ倒しも79年に登場したので、政治家や官僚の「業界用語」だったのではないかと推察できます。