(7月13日付朝刊に掲載した「ことばの広場」を再録しました)

 来月5日のリオデジャネイロ五輪開幕まで1カ月足らず。今回と次回、五輪にまつわる言葉を取り上げます。
 
 「我々は……競技規則を守り、騎士道精神にのっとって、祖国の名誉と競技の栄光のために戦う」。五輪史上初めて読み上げられた選手宣誓の言葉です。1920年、第7回のアントワープ大会で、現地ベルギーのフェンシング代表選手が右手を挙げて誓いました。
 
 五輪の選手宣誓は、高校野球とは異なり、宣誓する選手が自分で内容を考えるわけではありません。以前はオリンピック憲章で、現在は伝統を守りながらも大会ごとに作られる細則で定められています。
 
 第7回大会と現在の宣誓とを比べると、3カ所大きな違いがあります。
 
 まず、30年ごろの改訂で「騎士道精神」が「スポーツマンシップ」に変わりました。詳しい経緯は分からなかったのですが、騎士道という一部の地域のみで使われる、時代がかった言葉が、現代的な文言に改められたのだろうと推測されます。

 次に、62年の改訂で「祖国の名誉」が「チームの名誉」に変わりました。スポーツ史が専門の黒須朱莉(あかり)びわこ成蹊スポーツ大学専任講師によると、当時の国際オリンピック委員会では、五輪の過剰な愛国主義が問題になっていたそうです。