(10月12日付朝刊に掲載した「ことばの広場」を再録しました)

 みなさんは「食用昆虫」と聞いて、どんなものを思い浮かべるでしょうか。
 
 長野県などで昔から食されてきたイナゴや蜂の子、あるいは海外で味わった見慣れぬ虫料理を思い出すという方もいるかもしれません。国連食糧農業機関(FAO)によると、世界の20億人が1900種以上の昆虫を食べているそうです。
 
 読者から質問をいただきました。食用昆虫を人工的に育てるというネット記事を見たそうです。「昆虫を『生産』する、という表現にちょっと引っかかりました。検索してみると、昆虫『栽培』装置という言葉も出てきました。『養殖』『飼育』なども考えられますが、食用昆虫にはどれが一番ふさわしい表現なのでしょうか?」(川崎市、65歳男性)
 
 朝日新聞の過去の記事を調べてみましたが、食用昆虫を育てることに焦点を当てた記事は数本でした。校閲センターのベテラン数人に聞いてみると、おおむね次のような意見でした。
 
 農水産物のように昆虫を食料として見るなら「生産」と言えるでしょう。「養殖」は魚介類などを育てる時に使いますが、食用昆虫にも使えそうです。また、「飼育」は観賞用に育てる場合なども含めて幅広く使うことができます。ただし、「栽培」については植物などに使うのが一般的で、食用昆虫に用いるのは違和感があります。