(4月5日付朝刊に掲載した「ことばの広場」を再録しました)

 身内の「死」を他人に伝える際に「亡くなる」と言うのをよく聞くが、私はためらいを感じる――。読者からそんなご意見をいただきました。

 筆者も今年初めに身内を見送った際、尊敬語のように感じたので「他界しました」「息を引き取りました」を使いました。

 「亡くなる」は、広辞苑によると「人が死ぬことを婉曲(えんきょく)にいう語」。自分自身のことには使いませんが、身内なら誤用とは言えないはずです。なのに、違和感も確かにあります。

 人が死ぬことを示す表現は、あの世に行く、息が絶える、往生する、お隠れになる、帰らぬ人となる、逝去する、天に召されるなど、たくさんあります。新聞記事では「死亡する」「死去する」が多く使われます。

 「日本語 語感の辞典」(中村明著)は、「死ぬ」は最も一般的な日常語で明確な直接表現で、露骨な感じを避けるために「なくなる」や「永眠する」など様々な間接表現が使われてきたと説明します。ただ、そうした婉曲表現も使われるうちに死の意味と直結するようになり、また新たな間接表現を次々生み出してきた、とのことです。