(11月8日付朝刊に掲載した「ことばの広場」を再録しました)

 新党設立や野党の合流・分裂など政局が大きく動いた先月の衆議院議員選挙。そうした動きの前兆や裏事情を伝える記事でしばしば目にしたのが「秋波(しゅうは)を送る」との表現です。

 「秋波」を辞書で引くと、岩波国語辞典には「こびを表す目つき。色目」「もと、秋の澄みわたった波の意で、美人の目もとの感じを形容したことから」とあります。成語林では、女性のひそかに誘うような視線を「秋波」と表現した中国の南唐時代の漢詩を紹介しています。

 女性が色目を使って異性の関心を引く表現のはずなのに、紙面ではなぜか秋波の送り手はほとんどが男性政治家や政党です。立候補の打診や選挙協力の模索といった、いわば「片思い」段階の言動をそう呼んでいるようです。

細川 なるみ(ほそかわ・なるみ)

1982年生まれ、豪州などあちこち育ち。大学では比較刑事法専攻だったが、語学好きが高じて校閲記者の道へ。06年入社、東京校閲センター所属。大阪校閲も2年間経験。オフの楽しみは美術館めぐりとテニス観戦、好きなご当地キャラは「ひこにゃん」と「しまねっこ」。