(11月15日付朝刊に掲載した「ことばの広場」を再録しました)

 先月の衆院選で、「しがらみのない政治」を唱える政党代表がいました。

 「しがらみ」を日本国語大辞典で引くと漢字では「柵、笧」をあて、「水流をせき止めるために、川の中に杭(くい)を打ち並べて、その両側から柴(しば)や竹などをからみつけたもの」とあります。万葉集巻2の柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)「明日香川 しがらみ渡し 塞(せ)かませば 流るる水も のどにかあらまし」は、速い流れもしがらみでせき止めたならゆったりとしたであろうに、と歌います。雑木を編み込んだ柵(さく)を立て、川の流れを調節したものでした。

 江戸時代の百科事典「和漢三才図会(ずえ)」は「寨柵(しがらみ)」は農地の灌漑(かんがい)用に水を引くものと紹介。水道のない時代、川の水をどう利用し、水害をどう防ぐかに知恵を絞ってできた、暮らしを支える設備だったと考えられます。

町田 和洋(まちだ・かずひろ)

1958年生まれ、群馬県出身。84年入社、名古屋で紙面編集、学芸部記者などを12年ほど転々。名古屋、東京、大阪校閲部を経て08年から東京校閲センター。1万歩ウオーキングが日課。最近は白土三平「カムイ伝」と中森明菜にはまっている。