(4月3日にwithnewsに掲載した記事を再録しました)

 国語辞典の「広辞苑」が10年ぶりに改訂され、第7版が刊行されました。第6版から数百項目削り、約1万語を加えました。新たに載せた「LGBT」や「しまなみ海道」の説明が誤りだという話題が先行しましたが、既にあった項目にも目立たないながら画期的な変化があります。日頃よく使う校閲記者として、興味をひかれた点を紹介します。

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新たに刊行された広辞苑第7版。左は第6版

スマホと携帯

 「スマホ」が7版から加わったことは、広く話題になりました。一方、「携帯」の説明文が少し変わったのは、あまり知られていないようです。

 2番目の語釈が「携帯電話の略」なのは旧版と同じですが、直前に「『ケータイ』とも書く」という注記が付きました。

 岩波書店辞典編集部によれば、ある言葉をどのような種類の文字で表記するかに言及した項目が他にもあるため、「ケータイ」というカタカナ表記を明示したのだそうです。また、「ガラ携」の項目で「普通『ガラケー』と書く」と注記したこととも関わるようです。

「ナウい」はもはやイマ風ではない?

 「ナウい」は、6版には「nowを形容詞化した俗語」とあるだけでしたが、「ナウを形容詞化した昭和末の流行語」となりました。もはやイマ風ではないという見方のようです。

 ことばの使い方を示した「作例」や、過去の文献などにもとづく「用例」にも、時代を映した変化がみられます。

 「熱を上げる」の作例は、6版は「ビートルズに熱を上げる」でしたが、「アイドルに熱を上げる」と変わりました。辞典編集部によれば、現代の感覚に合わせたのだそうです。

 フランス語のpetitに由来する「プチ」は、6版では「小さい」「かわいい」などの語釈だけでしたが、用例に「プチ整形」が加わっています。手軽な美容整形が一般的になってきた証しとも言えそうです。

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朝日新聞東京本社校閲センターの棚に並ぶ広辞苑

田島 恵介(たしま・けいすけ)

1981年熊本市生まれ、関西育ち。博士(文学)。専門は漢字(特に音韻)。2年半の非常勤講師生活を経たのち、2013年入社。現在、東京本社校閲センター員兼用語幹事補佐。三度の飯より本が好き。成瀬巳喜男映画の大ファン。