(5月30日付朝刊に掲載した「ことばの広場」を再録しました)

 「右」が「左」より優位なのはなぜ、と読者から質問がありました。日本語のことですが。
 なるほど、「右に出る者がない」「右腕(みぎうで)」といったように右がつく言葉にはプラスイメージがあるのに対し、左には「左遷」とか「左前」などマイナスイメージの方が強いです。

 「右上位」の起源をたどると、日本書紀(720年)の「今無出於麁鹿火(あらかい)右」(アラカイ=人名=の右に出る者なし、の意)という記述に行き当たりました。ところが、同じころの古事記(712年)には、イザナキ(神の親)の左目から天照大御神(あまてらすおおみかみ)が生まれたとされる一節があり、「左上位」とする考え方もあったようです。

 そういえば左大臣は右大臣よりも格上でした。いまでも舞台の左側(客席から見て右)を上手、右側を下手と呼び、床の間を背負えば左手が上座、右手は下座とする慣習があります。

 なぜ価値観が二方向に分かれたのか。時代ごとに左右への優劣が異なった中国文化の影響だとする説もありますが、定かではありません。日本では言葉は右、しきたりで左優先と使い分けてきたともいえそうです。