(6月6日付朝刊に掲載した「ことばの広場」を再録しました)

 「普通においしい」という言い回しをよく耳にするようになりました。普通の味なのか、おいしいのか。年配者にはまだ抵抗感のある表現ですが、「予想外に」「当たり前に」などの意味で定着しています。

 いつごろ生まれた表現なのでしょう。小学館元国語辞典編集長の神永暁(さとる)さんは、2000年以降に生まれたのは確かなようだとみています。「平均的、一般的であるという意味で使われ、ニュートラルか、ときとしてマイナスの意味合いで使われてきた。ところが、プラスの意味にとらえられて普通においしい、普通にかわいいのような言い方が生まれた」とします。

 このような「普通に」の登場は、9・11米同時多発テロや東日本大震災などの“想定を超える”できごとを経験し、社会とそれを眺める私たちの気持ちが標準的であることを良しとする方向に変化したことによるのではないか。ノートルダム清心女子大の星野佳之准教授(日本語学)は、大学のサイトのエッセーでそう指摘しています。

越智 健二(おち・けんじ)

1961年生まれ。愛媛県今治市出身。84年、東京本社校閲部入社。以後、名古屋、大阪、東京と校閲一筋。現在勤めている大阪本社が計17年と一番長い。法律を学んでいたが、活字と向き合う仕事をしたいとこの世界へ。趣味は熱帯魚、ギター、陶芸、盆栽、書道、海外旅行、ウオーキング、川柳。ペンネームは越智子惚(落ちこぼれ)。一男一女の父。