(8月29日付朝刊に掲載した「ことばの広場」を再録しました)

 人や車が往来する道。なぜ「みち」というのでしょうか。万葉集などには「美知」の字を当てて「みち」と読ませる例があります。日本に固有の文字がない時代、漢字の音や訓を借りて日本語を表しました。万葉仮名と呼ばれ、「和我由久美知(わがゆくみち)=我が行く道」などと書きます。

 江戸時代中期の学者で政治家の新井白石が著した語源研究書、東雅(とうが)には「上古には道をばチといひ」「ミとは御なり、チは即(すなわち)道」とあり、「ミ」は尊称の接頭語で、「チ」が道の意味だとする説があります。

 まっすぐ行く道、近道を万葉集で「ただち」。「直道」の字を当て、道を「ち」と読みます。

 道を進んで行くと分かれ道に出合います。これが「ちまた」=道股(みちまた)です。大言海は「岐、衢、巷 ①路の支(えだ)ありて、方方へ分け行くべき所。わかれみち②街、里の中の路」と説明します。「また」は「一つのものが二つ以上に分かれているところ」(日本国語大辞典)。