(10月2日にwithnewsに掲載した記事を再録しました)

 四国には、息を切らして一言、満腹になって一言、つい口にする方言があります。場面とタイミングによっては、地元以外の人が聞くと、誤解を招きそうです。その方言は「せこい」――。共通語と違った独特の意味があります。どのように使われているのか、探ってみました。

「あの患者さん、せこいな」

 今年春先のことです。徳島県に住んで5年たつ徳島大学教授の村上敬一さんが風邪で病院に行きました。前の患者が診察を終えた後、地元医師のこんな一言を耳にしました。

 「あの患者さん、せこいな」

 「受診料以外に心付けが必要なのだろうか」。一瞬そう思ったと話す村上さんは、熊本県出身で日本語学が専門です。

 出身が徳島県以外の多くの人は「せこい」を「けちくさい」「ずるい」という意味に受け取り、医師が患者からの謝礼の少なさに不満を漏らした、と思ったのではないでしょうか。

 村上さんは「せこい」が方言だと気づきました。徳島県とその周辺で、つらさや苦しさを表す時に使われると言います。せきがひどい患者を診た医師が「あの患者さん、つらいな」と代弁したと分かったそうです。

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「せこいなあ」と言われても慌てないで

 ほかにどのように使われるのでしょう。地元の人に聞きました。

 医療機関では、ぜんそくや肺炎で「息がせこい」、鼻詰まりも「せこい」と息苦しい症状を伝える時に使うと言います。

 医療機関以外では「水泳の練習は、せこかった」「マラソンは、せこくなるので嫌い」「もう年だから階段を上るのが、せこい」という具合です。しんどいや疲れたという意味でも使われ、日常的に幅広い世代で口にしているようです。

 村上さんは、苦痛を引き起こす原因から由来をこう考えます。「風邪の時や激しい運動後、空気の通り道が狭く感じます。流れを遮る『せく』から、息苦しさを表す『せこい』ができたのでしょうか」。ほかにもいろいろな説があるようです。