(11月7日付朝刊に掲載した「ことばの広場」を再録しました)

 言葉が注目の的となる「日本語ブーム」は、不景気なときに起こる傾向にあるようです。

 ブームは戦後に何度か起こりましたが、例えばメディアで日本語ブームだと盛んに言われた昭和後期(1970年代)は、石油ショックの影響で実質経済成長率が落ち込んでいました。

 平成にブームが起こった際(99~2009年ごろ)も国内経済は低調でしたが、過熱ぶりは他の時期をしのぎます。

 その初めの数年間で、大野晋(すすむ)「日本語練習帳」(99年刊)を皮切りに、斎藤孝「声に出して読みたい日本語」(01年刊)や柴田武「常識として知っておきたい日本語」(02年刊)などが立て続けにミリオンセラーやベストセラーとなり、続編・類書が多数刊行されたのです。

 不景気な時代は、自分とは何者であるかというアイデンティティーが模索されるため、母語への関心が高まるともいわれますが、平成の大ブームにはほかにも理由があるようです。

 折しも、小渕恵三首相の私的諮問機関「21世紀日本の構想」懇談会が「長期的には英語を第二公用語とする」と提言していました。背景には、英語を話せなければ国際的に不利な立場になるとの切迫感もあったのでしょうが、賛否相半ばしました。

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