「今日は、しみたねー」「ほんと、しみたー」

 長野県の冬の厳寒期に交わされる朝晩のあいさつです。県内の医療機関や介護施設で働く県外出身スタッフは、地元の患者や入居者から「しみる」という表現を初めて聞いたとき、どのように思ったのでしょうか。長野・新潟・山梨県の甲信越地方のお国ことばを紹介します。誤解されやすい独特の表現にスポットを当てました。

 長野県北部の老人介護施設でのことです。千葉県出身の看護師の話を聞きましょう。

 ――ある年の暮れか、年明けのころかと思います。その日の午前中は、部屋の暖房をつけても寒さが厳しい日のことでした。施設に入居する高齢者の部屋へ入ると、天気の話の最中に「しみる」という一言が耳に入りました。なぜ「しみる」と言ったのか状況が分からなかったのですが、「どこが、しみますか?」と声をかけたところ、高齢者は答えました。「今日は寒いから……」

 看護師は、高齢者が答えた内容と戸惑った表情から「しみる=ひりひり痛む」ことではなさそうだと気づきました。「しみる」について方言辞典は「冷える」「冷え込む」「寒気が厳しくなる」と意味を説明し、地元出身の医師は「体がこおりつくように感じるときに使う」と言います。

 ほかの県外出身スタッフは、「しみる」をどのように受け取ったのでしょう。兵庫県出身の看護師は「傷口がしみると思った」、神奈川県出身の歯科衛生士は「歯がしみると思った」、新潟県出身の医師は「雪が硬くこおる意味に受け取った」と話します。「こおる」という近い意味に捉えた新潟県出身スタッフ以外は、厳しい寒さの表現とは思わず、「(傷口や歯が)ひりひり痛む」と受け取ったようです。