(6月22日付朝刊に掲載した「ことばの広場」の拡大版です)

 LGBTという言葉をよく聞くようになりました。Lはレズビアン(好きになる相手が同性である女性)、Gはゲイ(好きになる相手が同性である男性)、Bはバイセクシュアル(好きになる相手が異性のこともあれば同性のこともある人)、Tはトランスジェンダー(生まれた時の体の性に沿って割り当てられた社会上の性別と自身の考える性が異なる人)の頭文字。「性的少数者の総称として使われる」としばしば説明されます。

 日本では定着し始めたかのようにみえるこの言葉。一方で、当初の意味から外れつつあることや問題点も指摘され、海外では違う言葉も広がり始めました。

■「新しい言葉」として広がる


 「LGBT」が使われ始めたのは、1990年代の欧米です。性社会・文化史研究者の三橋順子さんは、「もともと、性的少数者といえばLとGと認識されていた。BもTもすくい上げる言葉としてLGBTが生まれた」。四つのコミュニティー同士の連帯を示す言葉だといいます。「私たちはLGBTなのだ」という連帯を示すはずの言葉が、いつしか「LGBTと呼ばれる性的少数者」といった他称に広がってきているのです。

 性的少数者が働きやすい職場作りのため、企業研修などを行うNPO法人「虹色ダイバーシティ」の村木真紀代表は「日本では、企業や行政が性的少数者の問題に取り組むようになってから大きく広がった印象だ」と話します。性的少数者に関する基本的な理解が広がっていないため、「『性的』という言葉を使うだけで企業では今でも警戒される。イメージのついていない新しい言葉が求められたのでは」。

 2007年に経済誌がLGBT特集を組み、13年に大阪市淀川区が「LGBT支援宣言」を出した頃から、日本でも段階的に広まりました。昨年、東京都渋谷区の同性パートナーシップ条例成立が大きく報じられたこともあり、朝日新聞紙面でもここ1年で使用が約3倍に急増しています。

■「LGBT」からこぼれ落ちる人たち

 ただ、どの性を好きになるか、自分の性別をどう考えるかは多様で、性的少数者はL、G、B、Tだけではありません。アセクシュアル(同性・異性に関わらず特定の人を好きにならない人)やクエスチョニング(自身の性や好きになる性別について確信が持てない人、または男/女のいずれかにカテゴライズされたくない人)など様々な人がおり、性的少数者をLGBTと呼ぶことで、自分はそこに含まれないと感じる人もいます。

青山 絵美(あおやま・えみ)

広島県出身。2011年に入社し、以来、東京本社校閲センター勤務。大学では、日本古典文学を学び、アメフット部で青春を燃やした。猫をこよなく愛するが、20歳を過ぎてアレルギーを発症。悲嘆の日々をおくる。