新聞を「聞く」アプリ

 満員電車の中、新聞はもちろん文庫本やスマホでさえ見る余裕がない……そんな時でも主要ニュースをチェックしたいという希望をかなえる、朝日新聞社のスマートフォン用無料アプリ「アルキキ」が人気です。

 アルキキは今年4月に発表された、簡単な操作で朝日新聞の主要な記事を読み上げるアプリです。「慌ただしい通勤中に誰かが新聞を読んでくれたらいいな」と担当者が思ったのが開発のきっかけでした。たとえば駅まで歩く10分足らずの間に朝日新聞の主要な記事を聞くことができます。歩行中など画面を見られない時に聞くことを想定しているため、①アプリを起動させて②大きな○の再生ボタンをタップするという二つの操作だけで、すぐに音声が流れてきます。読み上げるのは落ち着いた女性の声に聞こえる人工音声。発音やアクセントがとても自然で、本当に人が読んでいるのかも、と錯覚することもあります。

 自家用車で通勤している筆者の友人は、スマホを車のスピーカーにつなぎ、アプリをスタートさせてから運転を始めるそうです。「音が流れている間は画面を見る必要がないし、ラジオと違って自分の都合で聞き始めることができるのが便利だね」と話していました。

 アルキキは9月末までに約3万7千回ダウンロードされました。担当者は、家事をしながら、歩きながらなどの「ながら聞き」の需要があるとは想定していましたが、使い勝手などを書き込むコメントを見て視覚障害者も使ってくれていることに気付いたと言います。その後、コメントをもとに、当初は薄い色だった画面の色を、紺色と白など弱視の人でも分かりやすいはっきりとした色に変更できるようになりました。

 ほかにも再生スピードを上げたり、気になったニュースを朝日新聞デジタルの画面でさらに深く読んだりすることができる機能もあります。

 これまで、視覚障害者が文章を把握するには、人に読み上げてもらうか、点字に訳す「点訳」を介する必要があると思い込んでいましたが、聴覚障害者が字幕つきのテレビ番組を見るように、このアプリに記事を読み上げてもらえば紙面発行との時差なしに記事に接してもらえます。

見えない人にスマホは使いづらくないか?

 ここで一つ疑問が。画面に凹凸のないスマホは、タッチパネル式の電車の券売機などと一緒で、視覚障害者には使いにくくないでしょうか。視覚障害者はどうやってスマホやパソコンを使っているのでしょう? 百聞は一見にしかず。実際にパソコンやスマホを使っている様子を取材させて欲しいと、「インクルーシブデザイン・ソリューションズ」(東京都)の松村道生取締役(40)にお願いしました。

加藤 順子(かとう・じゅんこ)

2003年に入社し、広島総局など西日本各地を転々としていたはずなのに、ふと気付いたら校閲センターにいた、ひよっこ校閲記者。守備範囲は2次元から3次元まで限りなく広く浅い。アイドルから歌舞伎まで年40本の公演をみる舞台ファン。