■「ファーストジェントルマン」の立ち位置は?

 1月20日、米国でドナルド・トランプ氏が大統領に就任し、妻メラニアさんもファーストレディーとしてデビューしました。

 今回の大統領選では幻に終わりましたが、民主党候補のヒラリー・クリントン氏は米国史上初の女性大統領へあと一歩まで迫りました。同時に話題となったのが、「男性初の『ファーストレディー』」となりうる夫ビル氏の立場でした。ビル氏自身が元大統領ということもあり、どう呼ぶのか、ホワイトハウスでどういう役割を果たすのか、恒例のイベント(ファーストレディー候補同士のクッキーレシピ対決など)は行われるのか……と注目を浴びました。

 昨年の大統領選のさなか、米ニューヨーク・タイムズ紙は「クリントンが当選したら、彼女はビルをどう扱うべきか」と題した特集サイト
を設け、識者らの意見を紹介しました。ある人は「ビル氏が大統領だった時と同様、配偶者が政治的な相談役を務める『共同大統領制』でよい」と言い、またある人は「ビル氏のように才能ある人にはホワイトハウスの内装以外のことも任せるべきで、ファーストレディーをそうしたことに押し込めてきた従来のあり方を変えられる」と期待を寄せました。その一方で、「夫の経験を参考にしない手はないが、線引きには気を使うべきで、ビル氏はホワイトハウスのホスト役など補佐的な役割に徹するのがいい」とする意見もありました。

 大統領の仕事は男性でも女性でも変わらない一方で、配偶者が男性だととたんに「何をしてもらえばいいのか」と戸惑いが生じるのは、アメリカ社会がこれまでファーストレディーに「伝統的な妻の役割」を期待し押しつけてきたことの表れでしょう。

 私はかねがね、大統領の妻というだけで過度に注目を浴びたり、あるいは急に大きな発言力を持つようになったりする米国のファーストレディーのあり方に疑問を抱いてきました。女性の昇進を阻む「ガラスの天井」があると言われる政治の世界で、女性が選挙を勝ち抜いて活躍するのは容易ではありません。しかし有力な政治家と結婚すれば同様の影響力を手にできるかもしれないという「抜け道」があったとして、それは果たして「女性活躍」と呼べるのでしょうか。

細川 なるみ(ほそかわ・なるみ)

1982年生まれ、豪州などあちこち育ち。大学では比較刑事法専攻だったが、語学好きが高じて校閲記者の道へ。06年入社、東京校閲センター所属。大阪校閲も2年間経験。オフの楽しみは美術館めぐりとテニス観戦、好きなご当地キャラは「ひこにゃん」と「しまねっこ」。