写真・図版

 

咲

 いま学校で、幕末から明治にかけての歴史を勉強してるんだあ。

ご隠居

 おっ、それで坂本龍馬のファンになったとか?

咲

 そういう友達もいるけど、私は明治維新の「維」の字の方が気になってるんだ。

ご隠居

 そりゃまた、妙なところに目がいくね。

咲

 だって、維新の維って繊維の維と同じなのに、何の共通性もないじゃない。

写真・図版

維 古璽文

ご隠居

 たしかにね。お咲ちゃん、実は維には「つな」って意味があるんだよ。

咲

 ツナって缶詰の?

ご隠居

 まさか。そりゃ、英語でマグロの意味だろ。そうじゃなくて、物をつないでおくための……。

咲

 なーんだ。ロープって意味の「つな」だね。

ご隠居

 そう。そこから「つながる」とか「保ち続ける」。維持って言葉がそれに当たるかな。繊維っていうのは「筋」とか「細い糸」って意味で使われたもんなんだ。

咲

 そこまでは、関係が分かるけど、やっぱり維新とはつながらないね。

ご隠居

 これは漢字の意味というより、使い方なんだな。

咲

 使い方?

ご隠居

 うん。維は、文の初めや句の中間に置いて、文や言葉の口調・リズムを整えるっていう役目があるんだ。

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維 金文

前田 安正(まえだ・やすまさ)

前東京本社編成局校閲センター長、現在は朝日新聞メディアプロダクション校閲事業部長。1955年、福岡県生まれ。早稲田大学卒業、82年入社。2005年1月、東アジアの漢字事情をリポートした「アジアズームイン漢字圏」、07年1月、IT時代の漢字をテーマにした「漢字とつきあう」などを担当。13~16年、夕刊に「漢話字典」を連載。