昭和30年代の朝日新聞が活字をそろえていた漢字のうち、いわゆる「JIS外字」(第1・第2水準以外の字)はどれぐらいあったのか。
 前回まで、戦後の朝日新聞が活字を整備する対象としていた漢字とその字形基準をまとめた社内資料「統一基準漢字明朝書体帳」第3版(1960年)のページに沿って、4本社共通で整備する漢字4000字や各本社独自のローカル字をひととおり眺めてきました。そこでは主に字体問題、つまり「康熙字典体か略字体か」にポイントを当てて話を進めてきたため、のちのJIS漢字との関係についてはあまり詳しく述べてきませんでした。今回、あらためて整理しておきたいと思います。

 戦後の朝日新聞が当用漢字の略し方を表外漢字に当てはめて使っていた略字体、いわゆる「朝日字体」のなかには、「康熙字典体ならばJIS第1・第2水準にあるが、朝日字体のほうはJISの包摂規準(この字体差は区別せずに同じコードで表す、というルール)を当てはめても第1・第2水準では表すことができない」というものがあります。
 例えば老獪(ろうかい)のカイという字を、朝日新聞では当用漢字の「會→会」にならって「狯」(けものへん+会)と略していました。JIS第1・第2水準の範囲には康熙字典体の「獪」はありますが、朝日字体の「狯」はありません。つくりの「会」と「會」は包摂されないため、「獪」のコードに「狯」を割り当てるのは規格に反することになります。
 しかし採用した字体を別にすれば、収録した文字のなかに字種として「ろうかいのカイ」を含んでいるという点では、書体帳とJIS第1・第2水準は共通しています。
 ここでは、この「狯」のような例を除いて考えたとき、それでもJIS外字となるものが、書体帳にどれだけ含まれていたのかを見てみたいと思います。
 JIS第1・第2水準に含まれる漢字は、1978年の制定時点では6349字、現在は6355字。複数の字体が収録されている字ももちろんありますが、書体帳の4000字と比べれば多いのは確かです。そこに入らなかったのはどういう字だったのでしょう。

■字体方針にかかわらず「JIS外字」なのは

 「康熙体か略字体か」という要因によるものを除くと、書体帳の4000字の中に含まれるJIS第1・第2水準以外の字は、筆者の調べでは以下の12字でした。

写真・図版

 

 上の表では、JISの包摂規準やUnicodeの統合規則などをふまえ、対応すると考えてよさそうなJIS X0212(補助漢字)の区点位置とJIS X0213(第1~第4水準。ここでは第3・第4水準の範囲)の面区点位置、それにUnicodeのコードポイントを記しました。ごらんのようにいずれの字も補助漢字や第3・第4水準に含まれており、そのおかげでこのあとの本文中、(細かい形の差は別として)文字が表示できています(よね?)。
 では、個別に見ていきましょう。

比留間 直和(ひるま・なおかず)

1969年生まれ。学生時代は中国文学を専攻。1993年に校閲記者として入社し、主に用字用語を担当。自社の表外漢字字体変更(2007年1月)にあたったほか、社外ではJIS漢字の策定・改正にも関わる。