【解説】


 早いものでもう師走。冬のボーナスもなかなか増えないし、何か景気のいい話はないものかと昔の新聞記事を探してみたところ、目に飛び込んできたのが今回紹介する話です。

 「あぁ接収ダイヤさま 売出し前夜〝札止め〟 郷愁夫人やチャッカリ奥さん」。記事についた写真には折り重なって倒れているような人々が写っています。大変な騒ぎのようです。

 「接収ダイヤ」とはいったい何でしょうか。

 第2次大戦中、航空機や兵器などの製造に必要だと政府が国民に供出を求めたダイヤのこと。1943(昭和18)年から翌年にかけ、当時の新聞は「死蔵ダイヤも戦列へ」などと国民に供出を盛んに呼びかけました。戦後の大蔵省(現財務省)の発表によると、計150万個、16万カラットにもなったといいます。

 大砲や航空機の製造に不可欠な工業用ダイヤの代用品にする発想だったようですが、実際はほとんど使われず終戦を迎えました。終戦後は、一時米軍に接収されたものの返還され、日銀の地下金庫にしまわれていました。

 母国にこっそり持ち帰った米軍人が裁判にかけられたり、「紛失騒ぎ」が国会で取り上げられたりするなどした末、66(昭和41)年に業者向けの入札や、個人を対象にした百貨店や宝石商での売り出しが始まりました。

 入札や売り出しには反対の声もあったようです。「親のかたみを泣く泣く供出した。領収書もある。なんとか、元の所有者に戻してほしい」という手紙が大蔵省に寄せられたそうですが、所有権は国に所属するとして、売却が決定されたそうです。

 記事を点検してみましょう。「接収ダイヤ」が何のことだか、わからない読者もいるかもしれないので、出だしに少し説明を加えてはと提案してみます。見出しにもとられている「郷愁夫人」や「チャッカリ奥さん」。夫人や奥さんは既婚女性を指す言葉ですが、確認したのでしょうか。本文も含め「郷愁を語る人」「ちゃっかりした女性」などとしてはどうかと提案してみます。

原文どおりに表記することを原則としますが、読みやすさの観点から

・漢字の旧字体は新字体に
・句点(。)を補った方がよいと思われる部分には1字分のスペース
・当時大文字の「ゃ」「ゅ」「っ」等の拗音(ようおん)、促音は小文字に

等の手を加えています。ご了承ください

菅野 尚(すがの・なおし)

東京都出身、バブル末期の1991年入社。大阪を中心に西日本を回る。釣りやダイビングに目覚め、魚の生態観察に癒やされる。最近はスポーツジムで泡風呂にひたり、その後はビールの泡におぼれる日々を送る。