【解説】


 いよいよこの春、北の大地に新幹線が走ります。新青森駅と新函館北斗駅の間で3月26日に開業する北海道新幹線です。新函館北斗と東京の間は最速4時間2分、仙台との間は2時間半。函館から東北や関東までが「日帰り圏」に入ってしまうというので驚きです。そこで今回は、今の私たちと同じように当時の人たちが驚いたであろう、北海道への旅のスピードアップを報じる記事を探してみました。

 1932(昭和7)年5月の記事です。一気に3時間短縮とはすごいですね。

 本文の書き出しは「スピードの沙ばく東北、北海道地方」。のっけからずっこけてしまいます。当時の記者は、待望の新しい特急を紹介するにふさわしい文句は何かと考えたのでしょうが、これはいただけません。不毛地帯とでも言いたげな、東北、北海道への差別的な意識を感じます。たしかに東海道線など他の主要な幹線に比べると開発は遅れていたということがあったとしても、「旅行時間の短縮が長年待ち望まれていた」などとして歓迎ムードを出していけば良いのではないかと指摘しましょう。

 さらに「東海道に超特急が走る時、東北だけ継子(ままこ)扱ひはひどい」というのも出てきます。こんな例えを持ち出すことは、筆者に「継子」は扱いに差をつけられて当然だという意識があることの表れです。例えそのものに差別意識があるうえ、「ひどい」とは言いながら東北に当てはめることも、東海道との違いを必要以上に「上下の差」として強調しているような気がします。「遅れ」を言うのはやめて、これから良くなるというふうに前向きな言葉に変えてもらいたいところです。

 この記事によると、上野―青森間の736キロを急行が15時間50分で走っているところ、13時間40分で走る特別急行が登場し、道内での短縮と合わせて上野―札幌間の所要時間が3時間縮まるとのことです。仙台と札幌の両鉄道局ではさらなる高速化を望んでいたようですが、「赤字世帯」の鉄道省は満額回答はできずに3時間の短縮にとどまりました。それでも旅行者にはかなり便利になると結んでいます。

原文どおりに表記することを原則としますが、読みやすさの観点から

・漢字の旧字体は新字体に
・句点(。)を補った方がよいと思われる部分には1字分のスペース
・当時大文字の「ゃ」「ゅ」「っ」等の拗音(ようおん)、促音は小文字に

等の手を加えています。ご了承ください

薬師 知美(やくし・ともみ)

1983年兵庫県・淡路島出身。09年入社、東京校閲センター。2年間の千葉総局勤務を挟み、関東暮らしが長くなっても、口を開けば関西弁。鉄道のない島で育ったため、大人になってテツ子の道へ。地図とビールを片手に鉄道旅をするのが好き。