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孤族の国

震災 死悼む身内なし 「孤族の国」3・11から

2011年7月23日22時51分

 震災に吸い寄せられるように、被災地を訪れる人たちがいる。

 7月上旬の深夜、仙台市中心部の公園。真っ暗なベンチに一人の男性が座り、宙を見つめていた。荷物は小さなキャリーバッグだけ。仕事を求め、名古屋から来た労働者だった。

 44歳、独身。両親は他界し、故郷の大阪に住む兄とは20年以上、連絡をとっていない。派遣の仕事を転々としていたが、昨年末から生活保護を受けている。

 そんな彼に、震災はチャンスに映った。がれき処理の仕事に手を挙げ、仙台へ。しかし、実際の仕事は家屋の解体だった。日当7千円。契約途中で辞め、ネットカフェや公園で寝泊まりを始めて5日がたった。

 次に福島の原発周辺の復旧作業を狙っている。20日間限定で昼4万円、夜5万円との募集を見た。「今は満員だけど、次回に来てくれって」。翌日、彼に連絡をとろうとしたが、携帯電話はつながらなかった。

    ■

 震災の犠牲になりながら、その死を悼む身内すらいない人たちがいる。

 宮城県石巻市の中心部に近い古い木造の平屋で、70代の夫婦は、10年ほど前から暮らしていた。時折笑い声が外まで響いたが、近所との交流はなかった。近くの大家(62)も、生活保護を受けていること以外、身の上は知らなかった。

 3月11日、近くの川から押し寄せた津波は、2メートル近くの高さに達した。何日かたって、ビニールシートにくるまれた2人の遺体が、平屋から運び出された。

 4月に入って、大家が警察に呼ばれた。身元を確認できる身内は見つからず、2人の名は県警の「所持品等から推察される氏名等事項一覧」に掲載された。

 ようやく犠牲者として名を刻まれたのは、震災から4カ月後だった。(平井良和、仲村和代)

    ■

 朝日新聞が昨年末から始めた連載「孤族の国」は、人のつながりが変化し、社会から孤立する人々が急増していることに焦点をあてた。東日本大震災という未曽有の災害が列島を襲い、被災者、そして被災地以外の人々にも孤立化の危機はより身近となっている。

 先送りにすることのできない問いを、私たちは突き付けられている。あの日、2011年3月11日から。

  

孤族の国

  単身世帯の急増と同時に、日本は超高齢化と多死の時代を迎えます。「孤族」の迷宮から抜け出す道を、読者の皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
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