野田佳彦首相は、環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉に参加する意向を固めた。オバマ米大統領の再選を受け、日米関係を強める狙い。TPP参加に慎重な自民党との対立軸が鮮明になるとして衆院選での争点化を求める声も閣内にあり、首相は参加を表明したうえで、年内も含め解散時期を探る。ただ民主党内には反対論が根強く、離党者が続出する可能性もある。
野田首相は昨年11月、TPPの交渉参加に向けて関係国との協議入りを表明したが、農業など国内産業への悪影響を心配する党内の反発が強く、正式な参加表明は先送りした。だが尖閣諸島をめぐって中国との対立が深刻化するなかで、首相は米国との同盟を深化させるにはTPP交渉への参加を表明し、連携を強める必要があると判断した。
枝野幸男経済産業相は9日の記者会見で、TPPについて「次の選挙までに結論を出すべきだ」と述べ、解散前に参加を表明すべきだと主張。前原誠司国家戦略相も同日の会見で「TPPの交渉にも参加すべきだ。民主党が高らかにマニフェストに掲げて、選挙後の連携の一つの大きな軸にもなり得る」と述べた。
首相は衆院解散に向け、(1)赤字国債を発行する特例公債法案(2)「一票の格差」是正のための衆院選挙制度改革法案(3)社会保障国民会議の設置――の三つを判断材料にすると表明。自民、公明両党は特例公債法案を15日に衆院本会議で採決する日程に応じるなど、協力姿勢に傾いている。藤村修官房長官は9日の会見で、特例公債法案の成立を「(解散の)環境整備の一つであることは確かだ」と明言。首相はこれらの課題の進捗(しんちょく)状況を見極めながら、TPP交渉への参加表明に踏み切りたい考えだ。
20日の東アジアサミットの際に日米首脳会談を調整しているが、政権内には「協議をまとめていく一定の時間は必要」(玄葉光一郎外相)との声があり、参加表明を踏まえた解散は年末か年明けを想定する。
一方、民主党幹部は「参加表明なら選挙の前に党が割れる」としており、首相が参加を表明すれば離党者が続いて内閣不信任決議案の可決も現実味を帯びてくる。党内にくすぶる首相の退陣論に拍車がかかる可能性もあり、党執行部の一人は9日、「TPPで解散なんてあるわけない」と語った。輿石東幹事長も年内解散について「日程的にも物理的にも難しい」と否定的な姿勢を見せており、首相が思惑通り参加表明に踏み切れるかは不透明だ。