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森の民族、揺らぐ聖地 世界遺産とともに―4

2009年12月3日15時37分

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写真伝統行事で踊るミジケンダの人々=ケニア東部、ユネスコ提供

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 サバンナが印象的なケニアにも深い森がある。カヤと呼ばれる小さな森の集合体。森の民族ミジケンダの聖地だ。

 中心都市モンバサから北へ車で1時間弱。ラバイ地区のカヤは580ヘクタールある。

 「ケニアの希少植物の半分以上が見られる。森に入りたい? でも今日は長老34人の何人かが不在なんだ」。長めの腰巻き、細長いつえ、肩掛けカバンという長老衣装をまとった自称75歳のクウェジャ・ベラウさんは、森の入り口で申し訳なさそうに取材を断った。外部の人間を許可なく入れないなどルールを守ってきたから、森を残せたという誇りがベラウさんにはある。

 ミジケンダの人々は約500年前、ソマリア南部で敵対民族ガラとの抗争に敗れ、ケニアへ南下した。隠れるように住み着いたのがカヤ。ケニア東部に約50が現存する。森を城壁に見立て、丘の上に切り開いた空間で暮らす閉鎖社会。連帯を強め、独自の文化や習慣を育んできた。

 近代化が進み約70年前から居住者はいないが、聖地として敬われている。カヤの草木を使った民間療法や自然信仰、雨ごいや紛争解決の祈り、生活上の様々な決定を下す長老会議は今も続く。

 ユネスコは昨年、保存状態の良い11のカヤを世界遺産に、今年はミジケンダの文化や習慣を無形文化遺産の緊急リストに登録した。だが地元は手放しで喜んではいない。

 モンバサの五つ星ホテルで働くメリンダさん(21)はミジケンダだが、「モンバサ市内で育って、カヤのことは何も知らない。森では満足に暮らせないから」と言う。欧米重視で画一的な教育による伝統軽視、都市部への移住、土地開発、長老の高齢化……。カヤもミジケンダ文化も時代の波に崩されつつある。

 ユネスコはミジケンダの伝統保全のため、年内にも1千万シリング(約1200万円)を支出する。住民の収入源としての養蜂業推進、植林、啓発活動が検討されている。

 ラバイのさらに北、カウマ地区のカヤの長老会長ベンソン・アルラシドさん(71)は、閑散としたカヤを案内するうち、愚痴っぽくなった。

 「上席の長老はこの15年間おれだけ。黒と白と茶色と色んな色の鶏を各1羽、米5キロ、トウモロコシ5キロ、ヤシ酒12リットル。これを長老17人にそれぞれ貢ぐのが就任の条件。みんな意思はあるが、金がないから無理。ユネスコが来ても仕様がない」

 モンバサ南郊キノンド地区のカヤ住民らは2年前から、森と伝統を紹介するエコツーリズムに取り組んでいる。責任者ジェラルドさん(30)は「長老の説得に5年かかったが、私たちも努力は必要。多くの人に訪れてほしい」と話した。(モンバサ=古谷祐伸)

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