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舞い歌い 歴代の王敬う 世界遺産とともに―5

2009年12月4日15時29分

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写真毎年5月の宗廟大祭で披露される舞踊=08年5月、東亜日報提供

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 高層ビルが並び、人や自動車がせわしなく行き交うソウルの中心部。その一角に残る森の中に、世界遺産の宗廟(そうびょう)がある。14世紀末から500年以上にわたって続いた朝鮮王朝の歴代の王と王妃の位牌(いはい)がまつられている場所だ。

 18万7千平方メートルの広大な敷地の中心にある正殿と永寧殿は、国王が亡くなるたびに増築を重ね、位牌をまつる30を超える部屋が東西に一直線に並ぶ。ここに毎年5月、朝鮮王朝の王が輩出した全州李氏の子孫らが韓国全土から集まり、祖先をしのぶ儀式「宗廟大祭」を行っている。

 「礼と楽と舞踊が織りなす総合芸術。次の世代にもしっかり受け継いでいきたい」。祭礼の進行全般を担い、韓国の人間文化財の指定も受けている李基田さん(75)は誇らしげに語る。

 先祖を祭る宗廟と儀式は中国が発祥というが、文化大革命などを経て中国本土では、すでに廃れたとされる。それが、韓国の宗廟ではほぼ原形のまま受け継がれ、ユネスコは、大祭を無形文化遺産に登録した。

 儀式では、祭官の伝統衣装に身を包んだ李氏一族ら300人以上が、韓流ドラマの時代劇さながらに、静かに歩を進め所定の位置につく。肉や米、果物などの供え物は全国各地から最高の食材を集め、使われる銅製や木製などの祭器は5千個を超える。十分なもてなしを終えると供え物を取り下げて神を送り、祭礼で使用した祝い文などを焼く。すべてが厳格な手順で進む。

 並行して祭礼楽が披露される。鐘や笛、鼓などからなる器楽と、先代王の業績をたたえる歌、舞踊が優雅に祭事を彩る。祭礼楽の楽士が多く輩出している国立国楽院所属の演奏家で、現在は祭礼楽の指揮を担う崔忠雄さん(68)は「三つの要素をどううまく調和させられるかが重要。最も神経を使う部分です」と話す。

 大祭は王朝時代は国家行事として行われてきたが、日本による植民地支配や朝鮮戦争などを経て一時は途絶えた。だが李氏の一族から「国家が行わなくても、祖先に礼を尽くせるように我々が続けよう」との声が上がり、1969年から一族によって再開された。無形文化遺産となった今は費用の半分以上を国が補助し、韓国でも最大規模の伝統行事となっている。

 李氏王家の後継者にあたる李源さん(47)は「先祖を尊い、大切にする『孝』の精神は、いつの時代も最も大切なことの一つ。その価値を表現できることに重要な意義があるのではないか」と話している。(ソウル=稲田清英)=「世界遺産とともに」終わり

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