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ロス流「死者の日」華やか 異郷にて―3

2010年6月23日15時38分

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写真「死者の日」の祭壇を飾る先祖の写真や砂糖細工=米国ハリウッドで、ホセ・サカニー氏撮影

 寝室の壁、居間の飾り棚……米サンタモニカの青い海を遠望するその家は、死者の写真であふれかえっていた。「これが105歳で亡くなった高祖父、これは祖母の姉の結婚式」。家の主である画家のダニエル・アロンソさん(52)は、ご先祖さまに囲まれて、4カ月先のお祭りの構想を練る毎日だ。

 毎年10月末か11月初頭に米ハリウッドの墓地で開かれる「死者の日」のお祭り。この世を去った魂が年に一度、地上に戻り、親族や友人と再会する日とされる。参加者はマリーゴールドの花や砂糖人形をふんだんに飾った祭壇を墓地に作り、骸骨(がいこつ)のお面や化粧で自らも飾り立てる。毎年行われる祭壇コンテストで、アロンソさんは2度優勝した。「今年は祖母と2人の姉にささげるやつを作ろうと思う」

 祭りのルーツは隣国メキシコにある。アステカなど先住民の文明では、死は人生の一部である尊いもの。死者と生ける人が出会う「死者の日」は、色彩鮮やかにお祝いする日とされてきた。

 そんな文化を背負って、アロンソさんの祖父は1世紀前に米国に渡ってきた。「この国では、人々は失うことを恐れ、失う痛みを忘れようとする」。死に対する感覚の違いにアロンソさんは驚いた。

 ハリウッドの墓地に勤めていたアデラ・マルケスさんらメキシコ移民の従業員も、同じことを考えた。「ここで『死者の日』を祝って、墓地に彩りと活気を与えたい」。1999年、墓地のスタッフが中心になってこの祭りを始めた。

 ロサンゼルスは人口の半数がヒスパニック(中南米系)で、大半がメキシコ移民だ。それでも、母国の祭りを米国で祝う人は少なかった。「自分たちの伝統を祝うことに恥ずかしさがある。仕方ないですよ。異国にとけ込んで、うまく生きるためなんだから」。主催者の一人、リリアナ・ロサスさん(31)は言う。

 しかし、参加者は口コミで増え、最初の年には60ほどだった祭壇の出展も200になった。一番喜んだのは、米国に出稼ぎに来て、簡単には里帰りできないヒスパニックの不法移民たちだ。「イベントのおかげで子どもに『死者の日』を見せてやることができた」。ロサスさんはそんな声を何度も聞いた。

 メキシコの祭礼「死者の日」はユネスコの無形文化遺産だが、ハリウッドでは参加者の半分はヒスパニック以外。祭壇のまわりで親族が故人の思い出話に花を咲かせるメキシコの伝統的な過ごし方からすれば、イベント色が強過ぎるかもしれない。でもロサスさんは「必ずしも伝統の形にこだわる必要はない。大事なのは死者とどう接するかという気持ちですから」と話す。(ロサンゼルス=堀内隆)

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