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 戦後にソニーやホンダを生んだ日本だが、米国アップルのような会社はもう生まれないのだろうか。世界を変える商品を出すベンチャー企業を、どう育てるかは日本の今後にとって重要な課題だ。一度は失敗したが、今またベンチャー企業を生み出そうと取り組んでいる堀江貴文さんと夏野剛さんが語り合った。【前回はこちら】

2015年11月12日

構成/安井孝之 写真/竹谷俊之

義務教育が変われば選択肢できる

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堀江貴文(ほりえ・たかふみ)氏 ほりえ・たかふみ 1972年、福岡県生まれ。元ライブドア社長。プロ野球近鉄やニッポン放送株買収などで注目される。2006年、証券取引法違反容疑で逮捕され実刑に。11年6月から13年3月まで服役した。民間ロケットの開発を行うSNS株式会社ファウンダー(創業者)。最新情報は「HORIEMON.COM」へ

夏野 教育をどのように変えていきますか。

堀江 受験生が自分で勉強できる「受験アプリ」がすごいじゃないですか。だとすれば「専門学校アプリ」のようなものもいいんじゃないかと考えています。そもそも、いま、同じ学年の同じ年の子どもを狭い教室に押し込んで、授業を受けさせるのは、意味がないのではないか。アプリを使えばそれぞれの子どもの状況にあった内容を教えることができる。

夏野 先日、22歳以下のプログラミングコンテストがありました。優勝者は小学6年生。大学生も参加している中で、小学6年生ですごいアプリをつくって優勝した。こういう子どもを徹底的に伸ばしてあげると、すさまじい人材になる可能性がある。驚いたことに入選者8人中3人が小学生だった。でも中学の3年間は義務教育だから、つまらない授業も受けなくてはいけない。

堀江 まさにデジタルネイティブ(子ども時代からITに親しんできた世代)ですよね。

夏野 そういうケースが頭角をあらわしているのだけれど、中学校3年間で同質化圧力がものすごくかかる。そうすると、本当はものすごく尖(とが)ったところまで行ける可能性があるのに、ちょっと尖ったぐらいのところで止まってしまう恐れがある。

堀江 そこが問題ですよね。義務教育が変われば、いろんな選択肢ができますよね。

写真 夏野剛(なつの・たけし)氏 1965年生まれ。慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科特別招聘教授。NTTドコモ時代に、「iモード」「おサイフケータイ」などの多くのサービスを立ち上げた。ニコニコ動画のドワンゴの取締役もつとめる。

夏野 教育の選択肢を広げることが重要です。なのにいま、学校の教育は逆の方向に変わっている。ゆとり教育の見直しで、選択肢を狭める方に向かっている。

堀江 科学技術に興味があって、SF好きな人たちも、大学に進学して、大手企業に入ってしまう。いろんな選択肢はあまりない。日本には技術者のロールモデル(成功例)もない。IT系では目指したいモデルはいるけれど、米アップルみたいなハードウェア系技術者のモデルがない。

夏野 ソニーの久多良木健さん(プレイステーションの生みの親)らはどうかなあ? ソニーには犬型ロボットのアイボをつくった人もいる。この20年ぐらいは、ぱっとしないけれど。

堀江 いまや道ばた歩いている人100人に聞いてもぜんぜん知らないと思うし、古い。小粒ですよ。やっぱりアップルです。ぜんぜんレベルが違うと思う。

夏野 任天堂のゲーム機やPSはハードにちゃんとソフトをのせてビジネスにするバリューチェーン(価値連鎖)なので評価できると思うけれど。

堀江 でも、任天堂もソニーも(ゲームメーカーがより自由に参加できるような)ゲームのオープン化とスマホ化にまったくついていけなかった。ところが米国はみごとに変化に対応した。

夏野 そうだね。日本メーカーのモノづくり現場にいくと、その道何十年という人がすごくリスペクトされる世界がある。新入社員が入って、こういうのをつくりたいと言っても基本的に否定される文化がある。それでは変化に対応できない。

「相手の意見否定=人格否定」ではない

堀江 大企業出身の技術者たちと話をしていると、僕たちの考えはまず否定されますね。

夏野 大企業の技術者にとって新参者に否定されるのは、自分のアイデンティティーの喪失になる。もしかしたら、気持ちの中にはちょっと認めていることはあるのかもしれないけれど、否定しないと生きていけない。そんな心象風景でしょう。それは「教育」の問題だと思う。他人と違う意見があったときに、それを自分のなかにひとまず取り込んで、自分の言いたいことをどうやってブラッシュアップさせていくかということが教育だと思うのですが、なかなかそうはいかない。

堀江 まさにディベートができるかどうかですよね。例えば、僕が夏野さんの何かの意見を否定すると「夏野さんと仲がいいのに、なぜ夏野さんの意見を否定するの?」と言われるのが日本です。各論では、ここは意見が違うというのは当たり前だと思います。

夏野 摩擦が唯一のイノベーションの源だと思う。摩擦があった時に、それを乗り越えるために、どういうことを証明しないといけないとか、どういう技術が必要かと、一生懸命考える。

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堀江 そういう風に考えられる人はすごくいい。例えば、僕は「ニューズピックス」というニュース配信サービスで、投資会社インテグラルの佐山展生さんと対談して、意見が違うことが多いのです。でも、人間的に嫌いではなく、仲良くしています。相手の意見を否定するから、その人格を否定しているわけではない。

夏野 そういう議論や摩擦が嫌だから社長になりたいという人もいる。これはよくない。何かやりたくて、その手段として社長になるのはいいのだけれど、社長になることを目的にするのはおかしい。大企業のなかで上がっていく人は「俺は社長になって、いつかやりたい放題やりたい」と思っていて、いざ社長になると何をやりたかったか忘れちゃう。

堀江 摩擦を恐れる人がほとんどだと思う。

夏野 摩擦を恐れる。避ける。我慢する。それで社長になった時にはこんどは独裁的になる。摩擦が嫌だから意見をきかない。これは最低です。

堀江 米国と日本の文化の大きな違いは、日本ではディベートすると、人格を攻撃しているわけではないのに、人格攻撃になってしまうこと。お互いに意見が違うことに対して意見を交わしているだけなのにね。

夏野 シールズの運動なんかは典型的だと思う。安保の法律論を議論するのではなくて、反対か賛成かを問いかける。中心メンバーたちは法律論もちゃんと分かっていたようだけれどもね。

堀江 原発の議論も賛成か反対かだけ。

夏野 ディベートするなら、「じゃあ、否定するのだったら、代案は何か?」となる。それがないまま対立してしまっている。

堀江 知性があると思われているノーベル賞作家だとか、著名ミュージシャンはまだいい。彼らは話したら話は通じる。しかし、彼らのフォロアーたちというのは「反知性主義」だと思います。

 瀬戸内寂聴さんと原発問題で議論したことがあるのです。そこで重要なひと言を聞き出したんです。

 僕は瀬戸内さんにこう言ったのです。いまの原発産業は日本では「静脈産業」みたいになっている。静脈産業は従事したがる人が少ない。だから、花形とはいえないまでも世の中を支える重要な仕事で、やりがいもあって未来もあるような見せ方をしないと人はこない。これを完全否定してしまったら、人材が集まらなくて、いまより危険な状況になる。だから原発再稼働というのは必要なのではないですか、と。

 瀬戸内さんは理屈が分かるんです。だから「堀江さんと話していると原発容認派になりそうでこわい。だけど今さらそんなことは言えない」みたいなことを話された。

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朝日新聞 金融取材チーム Twitter

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