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 日本の成長戦略の一つは観光産業の振興です。円安の効果もあり、訪日外国人は急増。2020年に2千万人という政府の目標は前倒しで実現しそうです。魅力ある観光産業にどう変えるべきかを星野リゾート代表の星野佳路さんに聞きました。「ご当地らしさ」を追求することが大切なようですが、一方で日本人自身の休み方を見直す必要もあるようです。【前回はこちら】

2015年01月29日

構成/安井孝之 写真/竹谷俊之

地方の観光地、古い施設のまま

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星野佳路(ほしの・よしはる)氏 1960年、長野県軽井沢町生まれ。慶大卒業後に米コーネル大ホテル経営大学院修士課程修了。91年に星野温泉(現・星野リゾート)社長に就任し、現在は代表。リゾートのブランディングをするとともに、日本各地にある32の温泉旅館やリゾートの運営に取り組んでいる。

夏野 日本の成長戦略として外国から観光客を呼び込むことが、これからの日本の重要なミッションですね。

星野 円安の影響もあってインバウンド(海外からの観光客の流入)が増えている。特に東京や京都は増えていると感じます。インバウンド時代の課題の一つは、日本全国の観光地が東京や京都と同じようにインバウンドを増やすことができず、地域間の格差が出てしまうことです。一極だけのインバウンドの盛り上がりではなく、地方でも経済効果があった、雇用が増えた、投資が増えたという実績をつくっていくことが重要だと考えます。そのためには、日本文化の体験ができる宿や旅館のようなものを世界にアピールしていきたい。そうすることで東京や京都以外にも自ずと目が向くようになるのではないでしょうか。

「日本に行かない理由ない」 円安で外国人観光客増える(2015/01/04)

 この年末年始、首都圏で外国人観光客が目立っている。百貨店の初売りには昨年の3倍近くが訪れ、観光名所もにぎわった。日本ブームに加えて最近の円安が拍車をかけているようだ………[続きを読む]

夏野 訪日外国人を2000万人にするという目標がありますね。2014年は1300万人を超えました。我々がやっておかなければならないことは何でしょうか?

写真 夏野剛(なつの・たけし)氏 1965年生まれ。慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科特別招聘教授。NTTドコモ時代に、「iモード」「おサイフケータイ」などの多くのサービスを立ち上げた。ニコニコ動画のドワンゴの取締役もつとめる。

星野 実は今の1000万人が2000万人、3000万人になっても、日本全体の観光需要の1割を占めるくらいの規模です。どんなにインバウンドが伸びても、日本の観光需要のうち日本人による国内観光が8割以上を占めるのです。そう考えると、日本人のお客様に対して私たちが進化することが非常に重要なのです。日本人が観光産業に満足していないことや海外旅行の方がずっといいと思っている状況を変えることが課題です。

 また日本人は23兆円のお金を国内の観光に落としているにもかかわらず、観光産業全体としてしっかり収益を確保できていません。だから、設備投資ができず、正社員も増えない。私たちの業界は、パート・アルバイトの非正規社員比率が圧倒的に高いことが特徴で、それゆえ給料を上げられないし、地方の経済にも貢献できていないと感じています。需要がありながら、しっかりと利益を出すことができず、投資ができていない構造なのです。

 インバウンドが増えるのはいいことなのですが、インバウンドが本格的に増える前に、収益構造をきちんと構築する。施設を更新するための投資ができる経営体力を持てば、海外の人たちにも満足してもらえるはずです。

 多くの施設はバブルの時にできたものを、手直しして使っています。この20~30年間で、世界の建物はほとんど更新されているのに、日本の地方の観光地は古い施設のままです。

日本人、休みの取り方が問題

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夏野 日本人の休みの取り方も問題ではないですか。

星野 日本の場合、23兆円という観光需要は特殊な100日に集中しています。土日とゴールデンウィーク、お盆、年末年始です。

夏野 しかも集中日には旅館が取れなくて、高い。

星野 その通りです。しかも、いざ行こうと思っても高速道路は渋滞し、観光地も混雑している。売り手側が努力してもしなくても、集客できてしまう。そして、観光客が来ないときは、しょうがないと諦めてしまう。

 一方、フランスやドイツ、米国は春休みや大型連休が地域別に分散しています。フランスは学校の休みを地域ごとに分けている。例えばA地域は4月の1週目2週目、B地域は2週目3週目、C地域は3週目4週目に休みます。親はそれに合わせて有給休暇をとるのです。そうすると有休取得は進む。休みが分散するから予約したい宿が安くとれるのです。

夏野 2016年から8月11日は祝日になります。そもそも日本の祝日は何を基準に決めているのか、さっぱり分かりません。

星野 「山の日」ですね。

8月11日は「山の日」に 16年から祝日(2014/05/23)

 2016年から8月11日を「山の日」と定める改正祝日法が23日、参院本会議で自民、民主両党など与野党の賛成多数で可決、成立した。改正案は………[続きを読む]

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夏野 どんどん祝日が増えてしまうから、その分、有休の取得が進まないのだと思います。祝日を増やすことによって、ますます企業では営業日が少なくなるから、有休が取りづらくなる悪循環です。

星野 日本は意外に、祝日が多い。曜日の並びによって、その年の観光の需要が変わってしまうほどです。

夏野 今年は9月に「シルバーウィーク」がありますね。

星野 海の日も憲法記念日もあっていいのですが、本当は祝日は最低限にし、それぞれが自由に有給休暇を取れるようにするのがいいと思います。お子様がいらっしゃる家族はお子様と親は休みを合わせなければならないため、子どもの学校だけを地域別に分散させる。親もそれに合わせて有休を取得するようになります。これは観光需要を平準化する一つの方法だと思います。観光地の混雑は減少し、価格は下がる。新幹線の乗車率も下がる。このようにお客様にとって快適性は増えるうえに、観光地の生産性は向上します。いいことずくめなのになかなか進みません。

夏野 反対する人は誰なんですか?

星野 製造業は厳しいかもしれません。製造業はどこかの部品工場が休むと全体に影響が出ますので、地域別に休むことは難しく、一斉に休日を取得することが多いようです。

夏野 製造業は国内総生産の3割を切っているのだから、製造業が反対するから難しいという時代でもないように思います。

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星野 人口減もあって国内需要は減少しています。それを高めるには、休みを分散して、もっと旅行してもらうとみんなプラスになるのではないでしょうか。

 運動会前にはビデオカメラを買いますね。休みをうまく分散して家族旅行が増えれば、ビデオカメラを買ったり、デジカメを買ったり、車を買ったりします。いまは渋滞が起きるけれど、休みが分散すると快適に運転できるようになる。需要にもプラスになる。最終的には休みの分散は製造業にもプラスになるはずです。

朝日新聞 金融取材チーム Twitter

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