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 多くの若者が「社会起業家(ソーシャル・アントレプレナー)」を目指すようになりました。官でもなく、営利だけを求める民間企業でもない「新しい公共」といわれる分野です。社会に横たわる課題を解決することに挑戦する人たちで、ベンチャースピリッツを持ち合わせています。その第一人者で、病児保育という新しい事業分野を開拓した駒崎弘樹さん(フローレンス代表理事)に挑戦への思いを聞きました。【前回はこちら】

2014年10月22日

構成/安井孝之 写真/竹谷俊之

僕たちの役割は砕氷船

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駒崎弘樹(こまざき・ひろき)氏 79年生まれ。大学卒業後、フローレンスを立ち上げ、日本初の非施設型の病児保育サービスを展開。著書に「『社会を変える』を仕事にする」などがある。

夏野 駒崎さん、お子さんは?

駒崎 2人います。

夏野 始めたときにいらっしゃった?

駒崎 始めた時は独身男子です。本当にわけが分からなかった。僕も保育士の資格をとって実習もしました。現場に入るといろいろなことが分かりましたが、逆に門外漢だからこそ見えたことがあったと思います。もし保育業界の中の人だったら病児保育をやろうとは思わなかったでしょう。

 今月、日本で初めての障害児専門保育園を始めました。これも門外漢だったからできたのだと思います。日本の保育園は基本的に健常児を預かります。医療ケアが必要だとリスクがあり預かれないからお断りしているんです。

 障害のある子どもの母親はその5%しかフルタイムで働いていません。95%の親は働いていない。これでは親は煮詰まっちゃう。虐待もあるし、離婚も多い。これはおかしい。

 障害児専門保育園をやろうと思ったきっかけは世田谷区の障害児の母親からの声でした。育児休暇が終わったけれど、預けるところがない。彼女と一緒に保育園を探したけれど、東京では見つかりませんでした。1200万人都市、世界有数のメガロポリスなのに、1人の重症心身障害児も預かれないのはおかしい。これはもうオレがするしかないと勝手に思ってつくったのです。

障害のある子、入園の壁 「普通に申請させて」親が市長に要望書(2014/07/18)

 保育園や幼稚園に通って、元気に成長してほしい、友達と同じように――。そんな願いが見えない壁にはばまれ、悩み、苦しんでいる人たちがいます。障害のある子を育てる親たちです………[続きを読む]

写真 夏野剛(なつの・たけし)氏 1965年生まれ。慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科特別招聘教授。NTTドコモ時代に、「iモード」「おサイフケータイ」などの多くのサービスを立ち上げた。ニコニコ動画のドワンゴの取締役もつとめる。

 保育園は障害児を預かっていないから、障害児の通所施設が日本にはあります。その通所施設には4時間分の補助金しか出ていませんから、どこも4時間しか開いていません。だから僕は延長して、10.5時間開こうと考えました。そうすると親はフルタイムで仕事ができます。制度が想定していないやり方だったので、都からいろいろ言われましたが、最終的に妥協を引き出せました。それで10.5時間開所している日本で初めての障害児専門保育園を杉並区荻窪にオープンしたらすごく喜ばれました。

夏野 そのために引っ越してくる人もいるのではないですか。

駒崎 東京都以外の方から問い合わせもありました。これも制度にしようと思っています。今は力技で制度のはざまを縫って運営しているのですけれど、なかなかそこまでガッツのある事業者さんだけではありません。例えば延長すると補助金が加算されるような仕組みにするだけで参入しやすくなります。そうすればいろんな事業者が参入してきてインフラができます。僕たちの役割は砕氷船です。南極で一番最初に氷を砕く人。その後は航路ができるので大きなタンカーが通ればいいのです。

回転ドアをつくっていきたい

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夏野 その発想はいい意味で政治家のようですね。駒崎さんが厚労大臣になってもらえればすばらしい。日本は子どもが少ないのだから、子どもを大事にするしかない。それなのに生まれてきた子どもすら大事にできてない。でもそこに砕氷船で新しい航路を見つけてくれた。次は生まれてくる子どもをもっと増やさないといけない。そうなると全体の流れは家庭だけで子育てするのではなくて、社会で子育てする仕組みに移すしかないでしょう。

日本は少子化が著しいのに、妊娠の20%近くの中絶件数がある国です。そのほとんどが経済的な理由とか、産むと自由になれない、といった理由です。そこを解決してあげることが必要です。

駒崎 親が面倒をみられない子どもたちを育てる児童養護施設の卒業生たちは14%しか大学に行けていません。高卒の5割が進学している時代に、経済的な理由で進学できないのです。貧困が再生産されるだけなんです。例えばそこに奨学金を入れることが大切だと思います。

夏野 奨学金だけでなく、教育も手厚くするといいですね。例えば養護学校でITと語学は小さいときから、超一流の教育をする。普通の家庭の子どもがうらやむような教育を授けてあげるくらいでいい。

朝日新聞 金融取材チーム Twitter

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