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 安倍政権は2020年までに、指導的な地位に占める女性の割合を30%に引き上げる目標を掲げ、女性活用を成長戦略の柱の一つにしています。長らく続いた男性中心の社会から、女性が働きやすく、子どもを産み、育てやすい社会への転換で、少子化を食い止めることにもつながります。女性問題や少子化問題に積極的に取り組んできた野田聖子・自民党総務会長にどう男社会を変えていくかを聞きました。

2014年7月28日

構成/安井孝之 写真/竹谷俊之

人口減少の問題は女性問題

写真 野田聖子(のだ・せいこ)氏 1960年生まれ。93年に衆議院議員に初当選。郵政相、消費者行政相などを歴任。2012年12月から自民党総務会長。米国で第三者から卵子提供を受けて11年に長男を出産した。

夏野 安倍政権はようやく女性問題に焦点をあてはじめました。女性問題は人口減少問題とも密接に関係しています。日本創成会議が消滅可能性都市は全市町村の5割に迫るという「不都合な真実」を打ち出したことも大きなインパクトを与えました。企業の経営者も首長も、やっと人口減少社会に向けて何かをしなければいけないと感じはじめています。

野田 人口動静について、私が昔から使っているデータがあります。国立社会保障・人口問題研究所の数字で、鎌倉幕府のころから現在、そして将来までを試算しているものです。でも、かつての与党時代の自民党はそれは出すな、と言ってきました。人口が減るという試算を出すと、「与党の政策はダメだ」「いたずらに国民の不安をあおるな」「ミスリードしてしまう」と難色を示しました。それが堂々と世に出たのは民主党政権で、馬淵澄夫さんが国土交通相として示したのが最初です。それまではそんな数字は出すものじゃない、という雰囲気でした。

夏野 しかし人口がいずれ減ってゆくことは、みんな知っていた。

写真 夏野剛(なつの・たけし)氏 1965年生まれ、49歳。慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科特別招聘教授。NTTドコモ時代に、「iモード」「おサイフケータイ」などの多くのサービスを立ち上げた。ニコニコ動画のドワンゴの取締役もつとめる。

野田 知っていたが、関心はありませんでした。人口が減っていることに関心をもたれるようになったのは、ここ数年です。

夏野 それが決定的になったのは安倍政権になってから。日本創成会議のリポートのメッセージ性がとても強かった。各市町村の出産適齢期の女性の数を明らかにしてしまったからです。人口減少の問題は女性問題であることがはっきりしました。

野田 少子化問題はそもそも目に見えません。高齢化は若かった人たちが老化するので、目に見えます。リアリティーがある。少子化は生まれるべき人が生まれない現象で、だれも実感できないのです。

夏野 少子化問題を出産適齢期の女性の数に置き換えたことで、リアリティーが増しました。

野田 そうです。リアリティーが大事です。

夏野 2030年代に出産適齢期を迎える女性はすでに半分が生まれています。今年生まれても、30年には16歳になります。今後、出産適齢期の女性を増やすには、これから30年までにどれだけ子どもが増えるかで決まってしまう。そういう意味では、今は絶妙のタイミングで、安倍政権の政策の打ち出し方はうまい。

野田 あえて総理が女性の問題を、政権の1丁目1番地だと言って、女性が活躍することと、子どもを産みやすくすることとを抱き合わせで進めようとしていることは高く評価できます。

夏野 政府が2060年に人口1億人を維持する、というかなり高い明確な目標を立てました。すばらしいことではありますが、実際にやろうとすると、ものすごく大変だと思います。可能でしょうか?

「50年後も人口1億人」 育児支援倍増など対策提言(2014/05/14)

  中長期の日本経済の課題を検討する政府の有識者会議が13日、少子高齢化や人口減問題を解消するための提言をまとめた。50年後に約1億人の人口を保つため、出産・育児支援を………[続きを読む]

野田 何かをすればできるというのではなくて、何もかもしないと実現できない数字だと思います。でも日本人はとても優秀な民族だから、相当の費用をかけて、やるべきことをすべてやれば、V字回復できるかもしれません。

夏野 野田さんが総理にでもならない限り、できないかも知れません。いますぐにはじめないと。5年もたってからではもう遅い。野田さんならどうしますか。

野田 思いつくことは何でもやる。一番の岩盤は、日本人男性の頭の中身を変えること。ある年齢以上の男性には女性と競って働くという意識はありません。女性と競って、抜かれたという経験もない。それが当たり前になることを男性が容認できるようにならなければいけません。

夏野 今の20代の女性は男性に比べて優秀ですよ。

野田 それは今にはじまったわけではなく、昔からそうでした。でも日本版の男性クオータ制とでもいえる文化があり、男性であるだけで何割かは昇進できた。この文化を捨てられるかがポイントです。

写真

ヤジ問題、日本の未熟さあらわれた

夏野 20代の女性の可処分所得は同世代の男性を上回りました。若い層では、意識は変わりはじめていると思います。

野田 でもそれを待っているだけではだめで、70代、60代、50代の男性の脳内イノベーションが必要です。

夏野 ワーキングマザーたちを対象にしたシンポジウムに最近出たのですが、「わたしたちの声をもっと聞いて欲しいが、もう政治には期待しない」という声を聞きました。僕は「それはおかしいよ。声を上げないと変わらない」と注文しました。女性はもっと声を上げないと。

野田 日本は独裁国家ではないから、愚痴を言った方が変わるんです。

夏野 愚痴でもいいですが、ポジティブなメッセージに変えなくてはならないんじゃないですか。

写真

野田 いろんな人の声を聞き、政策をつくりあげることが重要です。自民党の今の政権公約は、野党の時につくりました。だから役人は関与していません。どうしたかというと、例えば自動車業界には、「今、大変なのはTPPですか? 為替ですか?」と聞きます。すると「実は為替です」と言われました。それがアベノミクスのはじまりです。それじゃ金融緩和で円安にしようとなったわけです。具体的に「こうやってほしい」という注文が必要です。

夏野 その通りです。しかし、少子化対策などについて、分からない人に分かってもらうのは無理なのではないかと思います。「子育ては大変なんです」と言ったって、出産、育児にはすでに直接関係ない高齢者も多い。ナショナルアジェンダ、国家的な課題に結びつけられるかが重要です。消滅可能性都市が全国で49.8%もあるという数字で、高齢者も「これはいかん」と思います。そこまではいい手を打ったのですが、安倍政権は具体策にたどり着けますか。

野田 政府の仕組みを変えることも必要です。少子化・男女共同参画担当という大臣がいますが、大臣は必ず置くことにはなっていません。少子化・男女共同参画担当大臣が、一定期間後には廃止するサンセット方式でいいから10年間は、財政、社会保障など関連する政策を、一気呵成(いっきかせい)に、一心不乱に取り組む態勢にしなければいけない。そうしないと、間に合わないと思う。

夏野 女性の活用や出産適齢期の女性が働きながら育てられるようにするという条件整備は必要ですが、それらは間接的な手法です。それに加えて、働きながらの子育てを社会が支援するという直接的な取り組みが必要です。

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野田 私は国会の予算委員会で代表質問した際に、直接総理に言いました。保育園に入れない待機児童を持っている女性は働けません。それを私も経験しました。私が働けたのは、夫が休んでくれたから。待機児童を抱えていたら、夫婦のどちらかが家にいないと育てられない。「待機児童を死語にしなければなりません」と総理に訴えました。子育てのプラットフォームを変えるのです。

 昭和の時代は働く人は男性でした。でもこれからの時代は働く人は男でも女でもそばに子どもがいる人とします。職場に子どもを連れて行ける環境をつくらなければなりません。

夏野 デンマークの国会では子連れで登院していますね。

野田 欧州委員会(EU)もそうです。

夏野 本会議場に子連れ議員がいるようになると、あんなヤジは飛ばせなくなりますね。

朝日新聞 金融取材チーム Twitter

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