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 東京一極集中の裏側で、多くの地方都市が苦しんでいます。「消滅可能性都市」というショッキングな言葉が生まれるほど、人口減少が加速。日本の将来を考えるうえで、地方を救う手がかりを見つけなくてはなりません。2007年に財政破綻し、再生に向けて動き出している北海道夕張市。市長の鈴木直道さんに夏野剛さんが再生への取り組みを聞きました。【前回はこちら】

2014年7月3日

構成/安井孝之 写真/竹谷俊之

応援する名目を掲げることが大切

写真 鈴木直道(すずき・なおみち)氏 1981年生まれ、33歳。埼玉県三郷市出身。東京都職員として働きながら法政大学法学部を卒業。大学ではボクシング部主将だった。08年から10年まで、東京都から財政破綻(はたん)した夕張市に派遣される。11年に夕張市長選に立候補し当選。30歳で全国最年少市長(当時)になった。

夏野 今後は税収をあげることで重要です。ふるさと納税制度も活路になると思いますが、いかがですか。

鈴木 ふるさと納税に応じていただいた方に、これまでは何もさし上げなかったのですが、今年からは15000円以上納税していただいた方に夕張メロンをお贈りすることにしました。昨年度は2490万円でしたが、今年度は4、5月の2カ月間で2100万円を超えました。

夏野 ふるさと納税は、納税者が使い道を指定できますから、税の「見える化」に役立ちますね。

鈴木 事業の内容や団体を選んで寄付できるので、夕張に来た人が「幼稚園が古いなあ」と思えば、幼稚園に使ってくれ、となる。

メロン効果、ふるさと納税額アップ(2014/04/18)

 財政再生団体の夕張市が、ふるさと納税制度を使って年間1万5千円以上寄付した市外の人らに特産の夕張メロン1玉(4千円相当)を贈る特典を付けたところ、15日までの2週間余りで376件の申し込みがあり………[続きを読む]

写真 夏野剛(なつの・たけし)氏 1965年生まれ、49歳。慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科特別招聘教授。NTTドコモ時代に、「iモード」「おサイフケータイ」などの多くのサービスを立ち上げた。ニコニコ動画のドワンゴの取締役もつとめる。

夏野 ところで夕張には幼稚園など子どもの施設はどうなっているのですか。

鈴木 財政破綻(はたん)した時に、小学校6校を1校に、中学校3校を1校に統合しました。子どもたちが1カ所に集まると、運動会なんかは盛り上がる。その一方で、家が遠い子は40分ほどバスに揺られて通学する。学校が終わったときに、校庭でワイワイ集まって、遊んでいても、サラリーマンの終電と同じで、「やばい、バスが出てしまう」と急いで帰ることになる。放課後に子どもが再集合できないのです。集う場所が必要だとわかり、廃校を活用できないかと考えております。もともと廃校活用は進んでおり、小さいオフィスとして貸したり、廃校によっては校舎をまるごと老人ホームにしたりしています。そこに子どもたちの集まれるスペースもつくる努力をしていきたい。

夏野 応援する名目を掲げることが大切ですよね。例えば、軽井沢で社会起業家の小林りんさんがインターナショナルスクールをつくっています。ふるさと納税で「インターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢」向けにお金を集めています。僕もファウンダーのひとりですが、最初の10億円の基金は70人ほどの個人と法人が出し合いました。そのあとは、ふるさと納税でお金を集めている。錦の御旗、シンボリックな目的が必要ですね。

どんな学校に? 軽井沢のインターナショナルスクール(2013/08/10)

 2014年9月に、長野県軽井沢町に県内初となるインターナショナルスクールが開校する。少数精鋭の全寮制で………[続きを読む]

鈴木 みんなも応援したいんですね。

夏野 そう。夕張の子どもたちのため、夕張の何々を応援するため、といった錦の御旗をソーシャル・ネットワークも使って、バーンと拡散すると、反応があると思います。

鈴木 夕張の映画祭は来年で25周年。ふるさと創生1億円で始めました。毎年海外からゲストを呼んで、豪華にやっていましたが、財政破綻の後は、できる範囲でやっています。いろいろな配給会社さんが、「アナと雪の女王」のようなアカデミー賞を取った作品をもって来てくれる。それはなぜか? 6000万円ぐらいかかるのですが、ボランティアが企業を回って募金を集める。ふるさと納税でも集める。そういった夕張を応援している人が再びつながりを確認して、みんなでつくってきた。

夏野 軽井沢の場合は毎月、軽井沢の広報誌が送られてくる。地元ネタが多くて、面白い。結びつきも高まり、来年もやろうかという感じになる。その継続感が必要です。

鈴木 夕張市もニュースは送ります。この1年間でこう変わりましたというニュースです。

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市長報酬は手取り月19万円、退職金もゼロ

夏野 夕張市民に渡しているものをそのまま送ればいいと思います。地元感満載のものでいいんですよ。その方がファンをいっぱいつくっていきます。ところで、鈴木さんが夕張にかかわり始めたきっかけは東京都からの出向ですね。なんでまた市長になろうとしたのですか?

鈴木 夕張とは縁もゆかりもありません。夕張が破綻し、一般職の職員は260人から104人に減りました。一方、東京都の職員は16万人。財政再建団体を支援するのもいい勉強になるからと、当時の石原慎太郎知事が「だれか若いやつを行かせろ」となったわけです。それで3人が出向しました。

 1人は函館出身、もう1人は北海道大学でした。私は埼玉出身で、北海道にはスキーで1回行っただけ。2人は1年交代でしたが、私は結局2年2カ月の間出向しました。出向後、都庁に戻ったのですが、当時の民主党政権が地域主権改革を一丁目一番地としていたので、内閣府に行って、民主党が何をやるか見てこい、といわれて、また派遣されました。そのころに夕張の市長選に出ませんか、と地元の人から要請が来たのです。

夏野 政治家になりたかったのですか。

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鈴木 いえ、一生、東京都の職員として、安定した暮らしがしたい、と思っていました。今は、結婚して、夕張で妻と2人で住んでいますが、要請があった時は、妻と付き合っていましたが、まだ結婚していませんでした。夕張から東京に戻ったときに、妻のご両親から「今後どうするのか?」と聞かれ、「もちろん結婚するつもりです」と。私は、埼玉県の三郷市の出身で中古住宅を近くに買い、そろそろ結婚というタイミングに出馬要請があったのです。家も買ったし、ご両親にもずっと東京都職員で働きます、と言っていたのですが……。

夏野 すごいタイミングですねえ。

鈴木 夕張の市長の報酬は70%カットになっており、手取りも月19万円。何十年勤めても退職金ゼロ。市長になれたとしても生活が大変なのは目に見えていました。それに選挙も厳しそうでした。

 自民、公明、みんなの3党の推薦を受けた小泉チルドレンの元衆議院議員が有力候補でした。市議会議員も大半が応援していた。前の選挙で次点だった実業家も出馬の見込みで、立候補しても私を応援する人はいるのだろうか、という状況でした。一番の難問は妻のご両親にどう説明すればいいか。ものすごいハードルがありました。

夏野 ご両親には東京都職員として安定した生活を送ります、と言っているのですからね。

鈴木 あんまり悩むタイプではないのに、人生で初めてすごく悩んだのですが、なぜかお断りする答えがすっと出なかったのです。夕張との縁と言っても夕張に派遣されただけなのに、断れない自分がそこにはいる。「何なのかなあ」と思った時に、すごいおごりかもしれませんが、「私だったら夕張を再生できる。やってみたい」と思えた。そしたら「やろう」と。

石原慎太郎さんが「お前を殺しはしない」

夏野 でも選挙は大変だったでしょう?

鈴木 大変でした。初めての経験ですから。恐れたのは、都知事の石原慎太郎さんに何も言わないで出馬して、「俺は何も聞いていない」と敵に回すこと。敵になるとこれほどこわい人はいません。息子さんの伸晃さんは当時自民党幹事長で元衆議院議員を応援していた。これはやばいと思いました。石原慎太郎さんは上司ですが、都知事なので、一職員があいさつしなければいけない関係ではないのですが、一応、ごあいさつに行こうと、時間を取ってもらいました。

夏野 石原さんとは面識はあったのですか。

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鈴木 石原さんは私のことをご存じでした。夕張市の派遣で会っていましたし、私はボクシングもやっていて、石原さんもボクシングが好きで、知っていたのですが……。でも、サシで話すことはありませんでした。石原さんの人を緊張させるオーラはハンパなくて、私の頭はまっしろになり、第一声で言ったのは「夕張市長なります」でした。石原さんが目をぱちくりさせて、「とんでもない勘違い野郎だ」「殺しやしない」と言ったように聞こえ、「終わったな。味方にはなってくれない」でも「殺されはしない」と。石原さんは次の予定もあるので、「じゃー分かった」と部屋を出て行きました。

 そのあと、その場にいた猪瀬直樹さん(当時、副知事)や秘書に聞いたら、石原さんはこう言ったらしいのです。

朝日新聞 金融取材チーム Twitter

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