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〈ネットはいま〉第2部―14 顔と顔を突き合わせる

2009年2月20日13時54分

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写真カーネル読書会を主宰する吉岡弘隆さん。飯田信一くん(右)は、18日に開かれた会にも顔を見せた=東京・新橋

 東京都足立区の中学2年生、飯田信一くん(14)は昨年12月、学校が終わると、新橋駅にほど近いビルの一室に駆けつけた。IT勉強会「カーネル読書会」に参加するためだった。

 飯田くんは「中学生プログラマー」。8台のパソコンを持ち、独学で無償の基本ソフト(OS)「リナックス」やプログラム言語「ジャバ」を勉強。自分でウェブサイト用のサーバーコンピューターを設定したりしている。将来の夢は、自分が作ったOSを、世界中の人に使ってもらうこと。この日は、自作OSを実際に作っている人が発表すると聞き、興味を持った。

 勉強会に集まったのは30人弱。発表者のプレゼンテーションが終わると、参加者から質問が相次ぐ。終了後は、ピザと、ビールやジュースで懇親会も開かれた。飯田くんは「いろいろ聞けて勉強になり、すごく刺激を受けました」。

 カーネル読書会は、IT勉強会の草分け的存在の一つだ。技術者が組織の枠を超えてつながり、議論し、活力を生む米シリコンバレー。そのただ中にいたプログラマー吉岡弘隆さん(50)が帰国後、日本でも技術者が議論できる場を、と99年から始めた。今秋には100回目を迎える。「活発さはシリコンバレー以上」という。

 草の根のIT勉強会は、首都圏を中心に400近くあり、毎日どこかで開かれている。

 特にオープンソース関連が多い。ネット上で、組織や場所の壁を超えた共同作業を進め、リナックスなどの無償のプログラムを作り出すオープンソース。ネットでつながることの利点を最大限に生かしている技術者たちが、わざわざ金と時間をかけ、顔と顔を突き合わせる。

 各地の勉強会の日程を掲載するサイト「IT勉強会カレンダー」を開設した大阪府在住の会社員、山口あゆみさん(36)によると、人気がある勉強会は、掲載後2日もすれば定員がいっぱいになるという。「普段はネットにどっぷりつかっている。その分、自分たちがやっていることを、実際に会って熱く語り合いたいんです」

 沖縄県に住むITエンジニアの上原学さん(33)は、東京出張の機会があれば、「カレンダー」で勉強会を探しておく。当日、仕事が終わった後に顔を出すのが、今一番の楽しみだ。「発表者の情熱をじかに聞くと、自分もかっこいいネットサービスを作りたいと意欲が高まる」

 ネットの普及で、情報をやりとりするコストは劇的に下がった。そんな社会で貴重になってきたのは、逆にネットでは伝わらないもの。「感情やにおい、息づかい。ネットはそんな『顔と顔』の価値を、改めて認識させてくれた」と吉岡さんは言う。(桜井林太郎)

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