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〈ネットはいま第2部〉―19 「発電所」が変える社会 下

2009年2月27日13時56分

写真「クラウド」について語るニコラス・カーさん=12日、米コロラド州デンバー近郊

 情報技術(IT)をテーマとするビジネスライター、ニコラス・カーさん(50)は昨年、「クラウド化する世界」を出版し、クラウド・コンピューティングと電力産業の類似性を指摘した。

 「コンピューターの能力を、送電網のような形で分配しようという発想は、50〜60年代にすでにあった。大型コンピューターは皆で共有して使うものだった」

 ところが小型機の性能が上がると、誰もがパソコンを買い、個別にソフトウエアなどをインストールする時代に。

 「最近になって高速ネットが整備され、ようやく送電網型のクラウドが実現した。何億人もの人が同時に使える、データの電力産業だ」とカーさん。電気製品のプラグをコンセントに挿すように、パソコンをネットにつなげば、情報やサービスが当たり前のように流れ込んでくる。

 多くの仕事が自動化され、省力化され、業務のコストは下がり続ける。だがカーさんは、そこにバラ色の未来だけを見てはいない。

 「電力は、膨大な産業労働者を生みだした。しかしネットによる省力化では、雇用が失われ、新たな雇用は生み出されていない。ここ10年近く、米国で起きているのは、それによって利益を上げたごく一握りの経営者だけが、巨万の富を得るという危険な格差の現実だ」

 そしてITの価値も、変わったとみる。

 「企業にとって、ITは強みだと考えられてきた。普及が進み、もうネットから離れることはできない。だがそれによって、逆にITは強みではなくなった。良い製品、良いサービス。今も競争力の源泉は、昔ながらのことだ」

 カーさんは、ネットの広がりに伴う「社会の溝」も指摘する。

 「例えば米国には、リベラルなブログや保守的なブログがあるが、いったん、どちらかに行ってしまうと、お互いの会話というものがほとんどない。ネット上で、言論の溝が深まっている」

 かつて送電網のおかげで、電気で動く様々な製品が生まれ、経済だけではなく社会、文化のあらゆるものが変化の波を受けた。「クラウドにも革命的な力がある。同じようなことが起きるだろう」。しかも良いことと悪いことの両面で。

 「社会や文化に対するクラウドの破壊力についても、考えておく必要があると思う」(米コロラド州エバーグリーン=勝田敏彦)

 =第2部終わり。撮影は筆者のほか高波淳、鷹野信行、竹原大祐、長原匡史、鎌田正平、谷沢隆が担当しました。

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