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672ドルになります 教育国の学力低下取材 @ハラレ

写真:2001年ごろと、街のたたずまいはあまり変わったように見えない=13日、ハラレ、江木慎吾撮影拡大2001年ごろと、街のたたずまいはあまり変わったように見えない=13日、ハラレ、江木慎吾撮影

写真:ところどころ、古さに交じって新しさも見える拡大ところどころ、古さに交じって新しさも見える

 13日朝、6時半に起きて地元のテレビをつけると、学生の一斉テストの話をずっとしている。その結果が思わしくなかったと言っている。

 ジンバブエはアフリカでも最高レベルの識字率を誇り、教育先進国だった。その制度は英国をならったといわれる。長い経済危機のつけが教育に及んでいるのだろうか、気になった。

 だが、きょうはまずやらなければならないことがある。情報省に行って、記者登録することだ。300ドルを支払わなければならない。1週間ほどしかいないのに、随分と高い登録料だ。

 写真を撮られ、カードを作られる。できた記者証を見て、係の女性は「あらまあ、私としたことが」と笑い出す。「これは国内の記者用のカードだわ」

 笑っているので「ここに住んでもいいんだけど」と追い打ちをかけた。だが、すべった。とにかく記者証は手に入った。さて、と思ったら朝のテレビが気になった。教育・スポーツ・芸術・文化省に向かい、どういうことか聞こうと思った。

 教育省の幹部に直接取材しようと押しかけたら、会議中だという。秘書が「質問と連絡先を紙に書いて」というので、ノートを破って書いて渡した。すると小一時間たって幹部から電話がかかってきて「質問があるときは、会社の正式な用紙に印刷するものです」と文句を言われる。あげくに、問題のテストに関しては、ジンバブエ学校試験協議会(ZIMSEC)に聞けという。

 郊外にあるZIMSECに向かう。受付で「今月発表された学生の一斉試験の結果を知りたい」と言うと、しばらく待たされた後に、若い男性がやってきて「どんな資料が必要ですか」と尋ねられる。

 「どんなと言われても、とにかく明らかにされた試験の結果が知りたい」というと、ではこちらへ、と2階の別室に案内される。コンピューターがあって、データを打ち出す紙が重ねられている。何となく場違いな所に来たという感じる。

 「合格率だけでいいですか。受験者数も必要ですよね。比較分析するために、何年分さかのぼりますか。データは2000年からあります」と矢継ぎ早に言われる。あいまいにうなずいていると、「では、データへのアクセス料と、ダウンロード、印刷でしめて672ドルになります」と言う。 「えっ、アメリカドルで?」と尋ねると、当然ですという顔でうなずく。記者発表されたデータを聞くのに、どうして6万円も払わないといけないのか。

 必要なのは、記者発表された資料だと説明しているときに、別の男性が部屋に入ってきた。会話を聞いていて「我々の扱うものではない」と言って、別の部屋に連れていかれた。そこで無事に記者発表の資料を手に入れることができた。

 一日がかりで資料一つというのは、とても効率が悪い。この資料をどう読み解くのかは、別に考えなければならない。地元のジャーナリストに連絡してみたが、あいにく忙しく、2日後にしか会えないという。

 この資料は2012年度のO(オー)レベル試験の結果だった。日本で同じようなテストがないので比較できないが、あえて乱暴に言えば大学入試センター試験のようなものだ。

 26万8854人が受験し、合格率が18・4%。前年の19・5%から落ちたため、メディアが騒いでいた。ちなみにOレベルのOは「Ordinary」のOで普通レベルということになる。

 だいたい17歳で受験してOレベルに合格すると、より高いAレベルに進む。そこからさらに大学へ進んで学位取得を目指す。学歴社会のジンバブエでは学位の有無がその後の人生に大きくものを言う。だから、Oレベルの合格率が下がるのは、大きな問題だというわけだ。

 大学入試センター試験と違うのは、総合点で争うわけではなく、何科目も受験できて、そのうち5科目以上で合格点を得られればいいことだ。科目別の合格率を見ると、地元の言葉のンデベレ語や商科、生物は50%を超えているのに、やはり地元の言葉のショナ語、数学は20%を下回っている。

 最も重要な科目である英語は20%と厳しい結果だ。ちなみに、女子の合格率は16・4%で男子より4ポイント低く、教育の男女格差があることもうかがえる。

 実は2000年ごろからずっと合格率は下がり続け、やっと10年ごろになって持ち直したとのことらしい。経済危機で何万人もの教師の削減があったとか、教科書がちゃんと支給されていないとか、メディアはこの結果をめぐる議論にかまびすしい。

 教育国らしい騒ぎだと言える。でも、違った角度から見ている人がいるようなので、それをさらに聞こうと思った。

江木慎吾

プロフィール江木 慎吾(えぎ・しんご)

61年生まれ。社会部をへて00年代、ナイロビ、ニューヨーク支局に勤務。バルカン半島、中東、アフリカ各地の紛争取材を経験しつつ、小心さは変わらない。動作が緩慢でのんきに見えるが、気は短い。趣味は散歩。しばしば二日酔い。だめトラファン。

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