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旅の無事を願って、コーヒー儀式 @ナイロビ

写真:香木がたかれ、コーヒーが注がれる拡大香木がたかれ、コーヒーが注がれる

 最初の訪問地にソマリアを選んだ。11年前の9・11米同時テロ後、アルカイダ系テロ組織の流入が盛んに言われ、その時、内戦が完全に終わっていなかったこの国を何度か取材した。

 その後も混乱は続き、今年9月にハサン・マハムード大統領が就任して、21年ぶりに政府が発足する。だが、イスラム武装勢力のシャバブが各地で攻撃を仕掛けている。

 アフリカが10年ぶりなら、取材の現場に戻るのも5年ぶり。いささか心もとないので、ナイロビ在住で地域の情勢に詳しいフォトジャーナリストの中野智明さん(53)に同行をお願いすることにした。

 出発を翌日に控えた25日、その中野さんから「コーヒー儀式」に誘われた。エチオピアとエリトリアでは、昔からコーヒーを豆から煎(い)り、香木をたいてたしなむ習慣がある。中野さんの古くからの友人のエリトリア人、エステファノス一家が、一席をもうけてくれることになった。中野さんがちょっぴり危険な場所に赴く時に、旅の無事を願う儀式がわりにもてなしてくれるのだという。

 地域によって異なるらしいが、エリトリアの高地では、コーヒーをいれるのは長老の女性だという。そこでこの日は一家のおばあさんが執り行ってくれた。

 豆を炭で煎ると、苦みとほのかな甘みを感じさせる馥郁(ふくいく)たる香りが立ち上がる。豆をひいて口が細くなった陶器のポットに入れて沸かす間に、今度は香木を炭にかざす。木の精を感じるような清らかな香りが満ちる。

 中野さんとともに、厄除(やくよ)けのお寺のように、その煙を体にまとった。

 おちょこのようなカップに砂糖を入れていただく。濃厚な味わいの1杯目をみんなが飲み終えると、さらに2杯目のポットを火にかける。3杯目は「バラカ」と言って、幸運をもたらしてくれるのだという。1杯に比べると味は端麗な感じの3杯目をいただき、儀式を終えた。

江木慎吾

プロフィール江木 慎吾(えぎ・しんご)

61年生まれ。社会部をへて00年代、ナイロビ、ニューヨーク支局に勤務。バルカン半島、中東、アフリカ各地の紛争取材を経験しつつ、小心さは変わらない。動作が緩慢でのんきに見えるが、気は短い。趣味は散歩。しばしば二日酔い。だめトラファン。

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