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「氏族の国」の再生を胸に @モガディシオ

写真:ハッサン・アブカールさん(中央)。父(左)、おじとともに=中野智明氏撮影拡大ハッサン・アブカールさん(中央)。父(左)、おじとともに=中野智明氏撮影

 故郷に戻れない人があふれる一方で、ソマリアには次々と人が帰ってきている。内戦を逃れて海外に渡っていたディアスポラと呼ばれる人々だ。

 ハッサン・アブカールさん(31)は、ソマリアの内戦が始まった1991年にカナダに渡った。父と母は離婚していて、父親は当時、ニューヨークの国連ソマリア代表部に勤めていた。

 父母はそれぞれ再婚し、その後に生まれた子どもを含めると、2人の子どもは17人になる。このうち、父側の9人がカナダに暮らし、母側の8人はソマリアに残った。母親はその後、亡くなった。

 カナダで自由に育ち、大学でバスケットを楽しんで、それでいて満たされない何かをアブカールさんは感じていた。それは、母親に引き取られてソマリアに残った兄弟、そして祖父母との絆を取り戻したいという渇望、自分の「ルーツ」を求める渇望だった。父親に「なぜソマリアは内戦を続けるのか」「なぜ帰れないのか」と何度も尋ねた。

 ソマリアに正式な政府樹立への動きが強まった昨年、父親がまず帰国した。そして、アブカールさんも半年前に故郷の土を踏んだ。その時から、何もかもが自分の体になじんでいるように感じた。この半年が今までの2年半にも思えるほど、充実した日々を送っている。

 父親が大統領府で働き、親類にも政治家が多い。ソマリア社会の柱である長老たちと若い世代をつなぎ、国づくりに参画したいとアブカールさんは思っている。

 イブラヒム・モハメッドさん(23)の場合は、両親が内戦前に出国し、カナダで生まれてふるさとを知らずに育った。アブカールさんのような大家族でもなく、兄弟5人の核家族だった。

 カナダで育ちながら自分がそこに属していないという思いを、モハメッドさんは抱き続けた。3カ月前にソマリアの地を踏んだ時、その違和感が氷解した。「みんなが一つの扉を通って出入りするような感じなんだ」。10人いれば3、4人がどこかでつながっている、そんな大きな家族の雰囲気がここにはあった。「これがわたしのふるさとだ」。そうモハメッドさんは思った。

 大学で公衆衛生を学び、ITにも通じているというモハメッドさんは、それを生かした仕事につきたいと感じている。

 一から始める国づくりに参加したいのだという情熱と興奮が、2人からは伝わってきた。外国で高い水準の教育を受けた彼らをソマリアは必要としているように見える。でも一方で、内戦を避けて国を離れ、いま戻って国づくりの中核に収まろうとするディアスポラたちを「上から降ってきた人たち」と冷ややかに見るむきもある。

 ソマリアは人口の圧倒的多数をソマリ人が、宗教的にはイスラム教徒が占めている。家族の結束が強く、血縁に基づく氏族を中心に、社会が動いてきた。それは半面、氏族同士の激しい勢力争いをもたらした。

 「氏族は私たちの恵みであり、呪いでもある」とモハメッドさんは言う。冷たい風が吹く「孤族の国」から来た身には、やけどしそうに熱い、人と人のつながりに思える。

江木慎吾

プロフィール江木 慎吾(えぎ・しんご)

61年生まれ。社会部をへて00年代、ナイロビ、ニューヨーク支局に勤務。バルカン半島、中東、アフリカ各地の紛争取材を経験しつつ、小心さは変わらない。動作が緩慢でのんきに見えるが、気は短い。趣味は散歩。しばしば二日酔い。だめトラファン。

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