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平和のメッセージ、歌に乗せて @ジュバ

写真:ラム・トゥングワルさん=10日、ジュバ、江木慎吾撮影拡大ラム・トゥングワルさん=10日、ジュバ、江木慎吾撮影

 南スーダンのジュバの街には、携帯電話、電化製品の宣伝に交じって、標語のような看板が目につく。「独立を選んでくれてありがとう」と、誰が誰に言っているのかよくわからないもの。ちなみにこれはジュバ市議会から国民に向けたものだった。独立のために戦ったスーダン人民解放軍(SPLA)をたたえるもの、国民の連帯を呼びかけるものなど様々だ。

 独立後の高揚を感じとることもできる。うがった見方をすれば、その高揚が去った後に備えるという意味もあるのかもしれない。

 夜、南スーダンテレビを見ていると、音楽がかかる。歌詞の意味はわからないが、映し出されるのは独立までの長い困難な闘争を振り返り、いまこそ人々の連帯が必要だと言っているような映像だった。人々の連帯、国のための協力、共存共栄、汚職追放といった政治的メッセージの強い歌は、日本のテレビでは敬遠されるに違いない。独立を勝ち得てこれから国づくりをするからこそ、そういう歌が必要なのかと感じ、地元の歌手にインタビューしたいと思った。

 ラム・トゥングワルさん(28)は南スーダンの少年兵だった。ケニアに脱出し、そこからミュージシャンの道を進んだ。よく知らないけれど、アフロロック、アフロフュージョン、アフロヒップホップなど多彩な音楽を手がけ、南スーダンのディンカ族の言葉を始め、英語、アラビア語、スワヒリ語など五つの言葉で歌っている。最初のソロアルバムは「チャイルド・ソルジャー」、つまり少年兵だった。

 世界に名を知られ、欧米を始め世界中で公演し、いまは南スーダン芸術家協会の会長もつとめる。行事の準備で多忙な合間を縫って、こう話してくれた。

 「私の最初のころの歌は、まだ南スーダンが独立する前のことだけど、平和と連帯を歌っていた。それに人権や反差別もね。それは、当時のハルツーム政府への反発のメッセージ、独立を後押しするメッセージだった」

 「そして、私たちは独立した。問題がなくなったかというと、そうじゃない。南スーダンには60を超える氏族がある。それが、家畜の放牧や境界線や、そんな小さな争いに明け暮れている。そうした氏族の違いによって平和を壊してはならない。一つの場所に私たちは住むんだ。広い国に800万人しかいないのに、なぜ身内で争うんだ。そういうメッセージを今、届けようとしている。もう一つ、汚職追放と、独裁ではない本当の民主主義の達成も目指している」

 でも、たとえば日本で「戦争反対」とか「汚職に反対」とか歌っても、あまり聴いてくれないかもしれません。ラブソングとか、日常の歌とか。そういう歌を南スーダンでみんなが楽しめる日は来るのですか。そう聞いてみた。

 「いいですか、東京やニューヨークでは、人々は性的な歌や、暴力やドラッグを歌うかもしれない。そういう想像の世界の中に私たちはいるのではないのです。私たちの社会は100年もの間、平和、平和と言い続けてきた。ようやくこれから平和な社会をつくっていかなくてはならないのです」

 「もしかしたら50年後、本当の文化的な社会を築くことができて、普通の日常の歌をみんなが楽しむようになるかもしれない。個人的には、クラブやストリップの歌に関心はないけれど。でも、私が世界で公演すると、みんな喜んでくれますよ。戦争反対の歌が、世界のみんなには新しく聞こえるようなのです」

江木慎吾

プロフィール江木 慎吾(えぎ・しんご)

61年生まれ。社会部をへて00年代、ナイロビ、ニューヨーク支局に勤務。バルカン半島、中東、アフリカ各地の紛争取材を経験しつつ、小心さは変わらない。動作が緩慢でのんきに見えるが、気は短い。趣味は散歩。しばしば二日酔い。だめトラファン。

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