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「一に道路、二に道路、三に道路」@南スーダン・ボル

写真:クオル・マニャネ・ジューク知事=12日、ボル、江木慎吾撮影拡大クオル・マニャネ・ジューク知事=12日、ボル、江木慎吾撮影

 それで、ジョングレイ州にいったい何をしに来たのか。そう言われると、風に吹かれてというだけあって、確固とした目的があるわけではない。ただ、新聞で「紛争地をめぐる」などと紹介されてしまったので、少しは緊張感のあるところに行かなければならないと背中を押されているわけだ。

 ソマリアは確かに緊張感があった。南スーダンについては、今のところ感じない。ジュバの回に「むきだしの敵意」について書いたけれど、そういう感情表現は平和だからこそで、戦時下にそんなことをしたらたちまち殺し合いになってしまう。

 南スーダンはスーダンとの間に帰属をめぐって争いのあるアビエイ地方を抱える。ほかにも緊張する場所はあるけれど、アクセスが難しい。今回は危険度は低いものの、少し緊張感のあるジョングレイ州に来たわけだ。

 この州の不安定要因は二つあって、一つは牧畜で暮らす人たち同士の争いだ。ムルレの人たちと、ジエなどの人たちが、州の東部、とくにピーボル郡で対立を繰り返している。このあたりの状況については、ナイロビ支局の杉山正支局長が今年1月28日の朝刊国際面に詳しく書いている。

 もう一つの要因は、独立のために戦ったスーダン人民解放軍(SPLA)からの分派、ヤオヤオ派が州内で反政府活動をしていることだ。

 その辺がどうなっているのか、クオル・マニャング・ジューク州知事に聞いてみようと朝の庁舎を訪れると、「情報、特に人権と命に関することはとても大事ですし、我々は世界村の住民ですからね」と快く取材に応じてくれた。

 「確かに、牧畜で暮らす人たちの間に争いがあるのは事実です。でも、新しい争いではなく、昔から繰り返されてきた争いです。家畜が死ねば生きてゆけなくなる。死ぬわけにいかないので、ほかから奪う。最近の争いが違うのは、長い内戦の間に銃器が加わったことです」

 「市民社会と政府が粘り強く武装解除を進めたことで、今は状況がよくなっています。ただ、州東部の一部、特にピーボル郡には問題が残っています。ここでは、昔からの対立の間を縫って、反政府勢力のヤオヤオ派も潜り込みました。SPLAから分かれ、スーダンで訓練を受けて舞い戻ってきたならず者たちで、最近までスーダン側から物資の空輸支援を受けていました。それが停止した今は、食料にも困っている状態です。地元住民ともいざこざを起こして次第に孤立してきています」

 「ただ、人々がなお不安を感じていることは事実です。また、街道に武装した盗賊も出没しています。こうしたこともあって、街道に多くの兵士を配置しているのです」

 2メートルはあろうかという大きな知事は実直そうに語る。ついでに、どうしてホテルが混んでいるのか、聞いてみよう。何らかの開発計画が進んでいるのか、投資話が花盛りなのか。

 「そもそもホテルが少ないということでしょう。ジョングレイ州には石油、金といった資源のほかに、ナイルの豊富な水、ひよくな土地、野生動物も多くいて、投資先として魅力があると思います。南アフリカや中東からいくつか投資話は舞い込んでいます。残念ながら、アジアからはまだあまりありません」

 「私たちの側にも問題はあります。就労率の低さはその一つです。スーダン内戦は20年以上に及びました。その間、働くことをしなくなった人たちがたくさんいます。『なまける心に悪魔が宿る(ことわざ)』というでしょう。人々に就労の機会を与えるためにも、投資は必要なのです」

 「治安回復にせよ、投資増進にせよ、とても大きな足かせになっている問題があります。道路です。首都のジュバとの間をつなぐ道路ですら、満足できるものではありません。州の東まで行くのに、いったんその首都まで南下しないと行けないのです」

 「物資を運搬するにも、犯罪者を捕まえに行くにも、融資を呼ぶにも、まともな道路が必要です。我々の喫緊の課題を問われれば、一に道路、二に道路、三に道路です」

 道路のひどさは、前日に経験したところだ。そのでこぼこ道をたどって、ボルから少し離れたところに暮らす人たちに、話を聞きにいくことにした。

江木慎吾

プロフィール江木 慎吾(えぎ・しんご)

61年生まれ。社会部をへて00年代、ナイロビ、ニューヨーク支局に勤務。バルカン半島、中東、アフリカ各地の紛争取材を経験しつつ、小心さは変わらない。動作が緩慢でのんきに見えるが、気は短い。趣味は散歩。しばしば二日酔い。だめトラファン。

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