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09月26日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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トワに注がれる冷たいまなざし @クムボネ村

写真:赤いシャツを着たエルネスト・ンゲンジさん=21日、ブルンジのクムボネ村、江木慎吾撮影拡大赤いシャツを着たエルネスト・ンゲンジさん=21日、ブルンジのクムボネ村、江木慎吾撮影

写真:ごみをあさる家族=21日、ブルンジのクムボネ村、江木慎吾撮影拡大ごみをあさる家族=21日、ブルンジのクムボネ村、江木慎吾撮影

写真:捨てるのを手伝う人も、拾う人も、同じ村人=21日、ブルンジのクムボネ村、江木慎吾撮影拡大捨てるのを手伝う人も、拾う人も、同じ村人=21日、ブルンジのクムボネ村、江木慎吾撮影

写真:ごみをあさる少年。右の犬のくびにひもをつないでいた。後方にクムボネ村の家々が見える=21日、江木慎吾撮影拡大ごみをあさる少年。右の犬のくびにひもをつないでいた。後方にクムボネ村の家々が見える=21日、江木慎吾撮影

写真:リベラテ・ニカイェンジ上院議員=22日、ブジュンブラ、江木慎吾撮影拡大リベラテ・ニカイェンジ上院議員=22日、ブジュンブラ、江木慎吾撮影

 話は少しさかのぼる。10月にナイロビから最初の訪問地、ソマリアのモガディシオに向かう飛行機で機内誌をパラパラめくっていて、途中で手が止まった。そのページには、次のようなことが書いてあった。

 「マウンテンゴリラのふるさとで、トワの人たちの昔ながらの生活に触れてみませんか。忘れられない旅の思い出になるでしょう」

 読んで、すごく嫌な気分になった。

 狩猟を中心に山の森林をすみかにしてきたトワの人たちの取材は、2年半のアフリカ勤務でも印象深いできごとの一つだった。

 ルワンダとブルンジと言えば、多数派のフツと少数派のツチの激しい憎悪と、その結果としての大虐殺や内戦が知られている。その中で両国の人口の数パーセントしかいないトワの人たちは、忘れ去られた存在だった。

 隣人のツチを刃物で斬り殺すフツの激しい憎悪の背景には、支配され、見下されてきた歴史がある。それは差別に対する憎悪とみることができるかもしれない。

 激しい憎悪が国中に渦巻く中で、その渦から取り残されるのも衝撃的だと感じた。たとえは悪いかもしれないけれど、けんかの絶えないクラスでシカトされた存在のようだ。冷たい差別だと思った。

 トワは「ピグミー」と呼ばれた人たちで、身長が低い人が多く、移動生活をしていたため、土地所有もままならず、教育を受ける機会にも恵まれなかった。フツからもツチからも「くさい」「汚い」とさげすまれてきた。相手をののしり侮蔑するとき、フツやツチは「お前はトワだ」と言う。

 山間地にまで入植が進むとトワの人たちが住むところは次第になくなり、今は政府などが用意した土地にまとまって住んで小作のような生活をしていることが多い。

 そうした村の一つがブジュンブラの郊外にあると聞いて行ってみた。

 クムボネ村には国内の様々なところから集まったトワの人たちが住む。村のリーダーのエルネスト・ンゲンジさん(42)によると、4ヘクタールの土地に354家族、3750人がいるという。一家族10人以上になる。

 1家族は家屋を含めて長さ11メートル、幅9メートルの区画を与えられている。だが、その土地ではとても一家が食べていくだけの食料を手に入れることはできない。村の外に広がる他人の所有する水田で働いて生計を立てる人がいる。それも、耕す道具を買える人に限られる。

 多くの家族は子どもを学校に通わせる余裕がない。その学校と村の間には大きなゴミ捨て場があって、危険なものが捨てられているのではないかと心配する人が多い。村の中に、腐臭に刺激臭の混ざった異様なにおいが立ちこめていた。

 200メートルほど離れたそのゴミ捨て場に行ってみた。道路の横の湿地にトラックが来て、ごみを捨てていく。ごみをトラックから降ろす仕事は、村の若者が月に1200円ほどで請け負っている。その若者たちがスキのような道具でごみをかきおろすと、そのごみをあさりに人が集まる。

 赤ちゃんを背負った女性と子ども、女性の母親らしき3人が、ごみをかき分けていた。小さな袋に燃え残った炭を拾って入れていた。子どもも多い。捨てられたばかりのごみから食べ物を拾って食べている男の子たちがいる。

 ゴミ捨て場の横には水だめがあって、その水は近くの水田にも使われている。水田では男性が農薬をまいている。水だめで作業していた男性が遠くから「そこにいる外国人に何か食べ物をくれと言ってくれ」と叫んだ。

 ゴミ捨て場では、古くなった薬が箱ごと捨てられ、燃やされようとしていた。そのすぐ横を、黄土色の制服を着た小学生たちが学校に向かった。

 子どもたちは学校でフツやツチの子たちに「あっちに行け」「ここに座るな」といじめられるとンゲンジさんは言う。ゴミ捨て場を何とかしてくれと言っているけれど、何も変わらないのだとも話した。

 なぜこんな不当な扱いをトワの人たちが受けなければいけないのですか。なんでそんな失礼な質問をしたのかわからないが、ンゲンジさんは小さく笑って「その質問に答えられるのは、神だけです」と言った。

     ◇

■差別をなくすには…

 トワの人たちには、憲法で上院3人、下院3人の国会議員の席が保証されている。上院議員のリベラテ・ニカイェンジさん(55)に、差別をなくすために何が必要で、何が行われているのかを尋ねた。

 「トワの発展も、社会への統合も教育にかかっています。でも、いまは小学校を卒業する子ですら50%に満たない。学校に通わすお金がない。制服が買えないから通えないという子もいます」

 「国も小さな土地をトワにも譲渡して農業をさせようとしていますが、農業をしようにも道具がありませんし、植える種もありません。常にひもじい思いをしているので、盗みで捕まる子どもや若者が後を絶ちません。悪い循環に陥ってしまっています」

 地方の村に行くと、村の祝い事があってもトワだけみなと離れた席に置かれ、一緒の食事をさせてもらえないことが多いという。

 「私たちは差別をなくすワークショップを開いて、話し合った後に参加者がみんな一緒の席で食事し、さらに議論を深めるという工夫をしています。地方ではまだまだですが、都会では理解してくれる人は増えています」

 「差別をなくすのも、教育が一番重要です。それに経済的な自立。いままではトワと結婚するフツやツチはいませんでした。でも、トワの国会議員でトワ以外と結婚した人がいます。経済的、社会的に自立できれば差別も次第に解消されるはずです」

 ニカイェンジさんには子どもが7人いる。夫はトワの人権活動家だったが、1994年のルワンダ大虐殺と同じころにブルンジでも起きたツチの虐殺にかかわった疑いで、裁判もないまま絞首刑になった。政権はその直後、暫定議会のメンバーにニカイェンジさんを指名した。いまは、トワの中から選ばれて上院議員を務めている。

江木慎吾

プロフィール江木 慎吾(えぎ・しんご)

61年生まれ。社会部をへて00年代、ナイロビ、ニューヨーク支局に勤務。バルカン半島、中東、アフリカ各地の紛争取材を経験しつつ、小心さは変わらない。動作が緩慢でのんきに見えるが、気は短い。趣味は散歩。しばしば二日酔い。だめトラファン。

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