メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

09月26日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

新着記事一覧へ

このエントリーをはてなブックマークに追加
mixiチェック

ナイルの源流、ショボい… まさかの姿に絶句 @ルトブ

写真:ピエール・シンバイヘブラさんの横の穴から流れる水=22日、ルトブ、江木慎吾撮影拡大ピエール・シンバイヘブラさんの横の穴から流れる水=22日、ルトブ、江木慎吾撮影

写真:洗面所のようなところ=22日、ルトブ、江木慎吾撮影拡大洗面所のようなところ=22日、ルトブ、江木慎吾撮影

写真:タイルの溝に流れる水=22日、ルトブ、江木慎吾撮影拡大タイルの溝に流れる水=22日、ルトブ、江木慎吾撮影

写真:メイズ畑の右を落ちてゆく=22日、ルトブ、江木慎吾撮影拡大メイズ畑の右を落ちてゆく=22日、ルトブ、江木慎吾撮影

写真:源流の全景=22日、ルトブ、江木慎吾撮影拡大源流の全景=22日、ルトブ、江木慎吾撮影

写真:ギキジ山頂のピラミッド=22日、ルトブ、江木慎吾撮影拡大ギキジ山頂のピラミッド=22日、ルトブ、江木慎吾撮影

写真:ギキジ山頂からナイルの源流の流れてゆく方向を望む=22日、ルトブ、江木慎吾撮影拡大ギキジ山頂からナイルの源流の流れてゆく方向を望む=22日、ルトブ、江木慎吾撮影

 ブルンジに来た理由は、コンゴ入国のためのビザを手に入れるためだった。ブルンジ入り前に申請の手続きを進めた時には、行き先のコンゴ東部ゴマの周辺で戦闘が起きているという話だったが、ビザ発給に問題はなさそうだった。

 ブジュンブラのコンゴ大使館に行くと、事前に提出していた書類の細かい不備を言われた。その21日、反政府武装勢力がゴマを制圧したという報道が流れていた。そして22日、もうビザは出さないと言われた。

 反政府武装勢力に制圧された場所を、外国人の記者に見せたくないということだと理解した。もともと、状況の急変を予想してコンゴ入りを目指したわけではない。仕方がない。

 どうするか。ルワンダのビザが出るのを待って、ルワンダで再び申請してみることにした。そのルワンダのビザが出るまで、まだ2日ある。

 ありがちなトラブルではある。もし、アフリカ報道を任された特派員だったら歯ぎしりしているところだけど、こちらはニュースを追うことを求められているわけではない。幸い、ナイロビ支局の杉山正支局長はちゃんとコンゴに入れたと連絡があった。

 気長にいこう。へこんでいても仕方ないので、切り替えて観光気分の小さな旅に出ることにした。目指すはルトブという村にあるギキジという2千メートルほどの山だ。

 タンガニーカ湖畔にあるブジュンブラの標高は約800メートルある。そこから小高い山を越えると、蒸し暑さから一転、空気をひんやりと感じる。

 緑豊かな高原地帯が続く。バナナの木と、茶畑と、草をはむ牛と羊と。食べる草はたっぷりありそうなのだけど、このあたりの牛は角ばかり立派であばらが浮いている。

 高さ2千メートルを超えると畑は減って牧草地と林が広がる。舗装された道を車で3時間近く走り、目指す場所に着いた。

 雨が激しく降ってきた。そこは乗用車が20台ほど駐車できる駐車場のようだったが、ほかに車は止まっていない。そぼ降る中を男が2人現れて、傘もささずにこちらをじっと見ている。近くに学校があるらしく、下校する子どもが、これまたずぶぬれになって、こちらをうかがっている。

 秘密めいて書いたけれど、目指す場所というのはナイル川の源流だった。ブルンジにナイルは流れていない。ナイルにはいくつか源流と言われる流れがあって、その中で最も南にある源流がここだと言われている。

 山を越え、谷を渡り、渓流をさかのぼり、息も絶え絶えにたどり着く。そうだと格好よかったのだけれど、ナイルの源流は駐車場のすぐ下にあった。雨が小降りになったので、車を出て向かおうとすると、様子をうかがっていた男たちが近づいてきた。お金を払えという。

 村役場に雇われた、いわば源流管理人たちだった。外国人は5千フラン(300円ほど)、ブルンジ人は2千フランを支払うのだという。

 駐車場から10メートルほど階段を下りると、そこが源流だった。幻想的な響きを「ナイルの源流」に感じたとしても、それは勝手な思い込みに違いない。それにしても、これはあまりに……という姿だった。

 5カ月前から工事中とのことだった。斜面を覆うタイルの壁に開いた穴から流れる大河の滴は、小さなタイル張りの洗面所のようなところ三つをへて、やはりタイル張りの溝をたどり、メイズ畑の脇をチロチロ流れてゆく。

 管理人のピエール・シンバイヘブラさん(41)は「観光客が楽しめるように、きれいな公園に整備する」と言う。水洗トイレを作っていて、これまた源流の上にあって、えもいわれぬ光景となっている。きょうは中国人の一行が来ただけというから、さほど観光客が来るわけではなさそうだ。

 シンバイヘブラさんが言うには、本当の水源は5メートルほど上にあったのだが、地中に小さな貯水池のようなものを作ったのだという。一応、穴からコボコボと流れ出る水に触れてみると、冷たいとまではいえない、あいまいな感触だった。きっと、落胆が感触のあいまいさにつながったのだろう。

 水源から40メートルほど上ると、ギキジ山の山頂だった。GPS装置をみると、標高は2086メートルと出ている。そこには高さ2.5メートルほどの石のピラミッドがあった。ナイルの源流だからピラミッドということなのだろう。1938年に築かれたという。

 「ナイルの頭」とそこには刻まれている。見回せばまさに分水嶺(ぶんすいれい)といった趣だ。源から名前を様々に変えながら流れる北東の方向は、盆地のように見える。雲に覆われ、ひんやりとした空気にはかすかに松ヤニのにおいがする。

 うねる緑を眺めながら思った。「ナイルの頭」をどうするかは、地元の人たちが考えることだ。通り過ぎる身が「なぜこんな姿にしてしまったのか」と言うのはせんえつだろう。シンバイヘブラさんに「ナイルの本流を見たことがありますか」という意図不明な質問をしてしまったこととともに、反省した。

江木慎吾

プロフィール江木 慎吾(えぎ・しんご)

61年生まれ。社会部をへて00年代、ナイロビ、ニューヨーク支局に勤務。バルカン半島、中東、アフリカ各地の紛争取材を経験しつつ、小心さは変わらない。動作が緩慢でのんきに見えるが、気は短い。趣味は散歩。しばしば二日酔い。だめトラファン。

PR情報
検索フォーム

注目コンテンツ

  • 写真

    【&BAZAAR】行楽&運動会前に欲しい!

    デジタル一眼売れ筋ランク

  • 写真

    【&TRAVEL】今回はタオルを巻いて入浴

    連載「原田龍二の温泉番長」

  • 写真

    【&M】ライバルは短距離飛行機

    ボルボが提案する未来の車

  • 写真

    【&w】パン・ジャムを1人で作る職人

    このパンがすごい!

  • 写真

    好書好日150冊読んで見つけた原作

    木村大作監督「散り椿」秘話

  • 写真

    WEBRONZA韓国の脳死・臓器移植の現状

    今日の編集長おすすめ記事

  • 写真

    アエラスタイルマガジン銀座三越で特別イベント開催

    旬の着こなし術を編集長が解説

  • 写真

    T JAPAN花や鳥をお菓子で表現

    伝統工芸菓子の妙なる世界

  • 写真

    GLOBE+政治劣化はトランプのせい?

    否、逆だ。その理由は

  • 写真

    sippo河川敷の“ホームレス犬”

    老いて初めての室内暮らし

  • 働き方・就活

  • 転職情報 朝日求人ウェブ