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帰宅・再会… 戻りつつある「普通の生活」 @サケ

写真:赤ちゃんを抱くガヒンドゥ・マウングさん=27日、サケ、写真はいずれも江木慎吾撮影拡大赤ちゃんを抱くガヒンドゥ・マウングさん=27日、サケ、写真はいずれも江木慎吾撮影

写真:オマーリ・セレマンさん=26日、ムグンガ1拡大オマーリ・セレマンさん=26日、ムグンガ1

写真:自宅で腰を下ろすファイザル・ションボさん=27日、サケ拡大自宅で腰を下ろすファイザル・ションボさん=27日、サケ

写真:町に生活が戻っていた=27日、サケ拡大町に生活が戻っていた=27日、サケ

 27日にサケに行こうと思ったのは前日、ゴマ郊外にある避難した人たちのキャンプ、ムグンガ1を訪ねたからだ。定点観測と称して溶岩の上に腰を下ろしていたとき、オマーリ・セレマンさん(37)が話し相手になってくれた。サケから逃げてきたというセレマンさんはとても穏やかな印象を与える人だった。

 もしサケに行くなら、家が心配なので車に乗せていってほしいと頼まれた。連絡すると言って携帯電話の番号を聞いた。ゴマ市内に戻る車の中で、彼と一緒にサケに行こうと考えた。もう少し、彼の話が聞きたかった。

 携帯電話の番号にかけてみた。けれど、電源が入っていないようだった。キャンプに来て、充電するゆとりがなかったのだろう。キャンプの入り口には携帯電話の充電を商売にする店があったけれど。

 セレマンさんは以前、赤十字で働いていたことがあるが、その後はバイクタクシーの運転手だった。4人の子どものほか亡くなった親類の子ども3人を引き取って育てていた。

 21日夜に銃撃音がして、商売道具のバイクをだれかに盗まれた。夢中で逃げたが、途中で家族とは離ればなれになってしまった。3時間かけてキャンプにたどり着いた。家族の無事はその後、見かけたという人から伝えられた。

 平和にさえなればいいのだと彼は話した。M23が平和をもたらしてくれるかは疑問だとも言った。「武装勢力は強制的に徴用するから」。7年前の自身の経験からくる言葉だった。

 ある朝、当時の武装勢力「人民防衛国民会議」(CNDP)に道で止められた。医療活動に従事したことがあるとわかると、グループに強制的に入れられた。1年間、傷病兵の世話をさせられ、やっと逃げ帰った。

 断片的にそんな話を聞いていたので、もっとじっくり話を聞きながら、家の様子を見に行く手伝いをできないかと考えた。

 携帯電話が通じないので、ムグンガ1で出会った付近に戻って探すことにした。サケから来たセレマンさんと言って、カメラに残った写真を見せながら探した。すぐに人だかりができて、みんなカメラをのぞきたがるのだけど、単にカメラの画像を見たいだけという人が多い。

 でも、知っているという何人かが見つかり、その人たちの案内であっちこっちを回った。いない。1時間半ほどたって、彼が親類を病院に連れて行ったらしいということがわかった。病院はゴマにあるといい、行こうとしているサケとは反対方向だった。

 セレマンさんの帰宅応援はあきらめ、サケに向かうことにした。キャンプからは車で40分足らずの距離だった。いくつもの家族連れが、大きな荷物を持ってサケの方角を目指していた。情勢が落ち着いたとみて帰宅する人たちだった。

 サケは山のふもとにある小さな町だった。ゴマに続いてM23が制圧した町で、この先が前線ということになる。ゴマに比べると、木でできた家が圧倒的に多い。

 道に放置されていたという遺体は片付けられ、道沿いには食べ物の露店も出始めて普通の生活が戻りつつあった。町の中心部には軍服姿はほとんどいない。

 ガヒンドゥ・マウングさん(40)が家に戻ったのは前日だった。7キロほど離れたキロチというところにある病院に身を寄せたが、あまりに人が多く、換気も悪くて家に戻ることにしたと、赤ちゃんに乳を与えながら言う。

 と、そこに隣人が「逃げるときに腕を痛めて」と言いながら入ってくる。「あら、帰ってきたのね」と、しばし再会を喜ぶという光景が何度か続く。ここは表通りから入ってすぐの家なので、人が集まる場所になっているらしい。

 これまでも争いがあるたびに逃げてきた。今も怖いとマウングさんは言う。「私たち普通の人間の間には、何の問題もない。権力をもっている人が解決してくれないと困る」と平和な日々を願う。

 ファイザル・ションボさん(47)も、マウングさん宅に顔を出した一人で前日に避難先から戻った。家に来いと言うのでついて行った。

 13人の子どもがいるが、教師だった夫は今のジョセフ・カビラ大統領の父親が大統領だったころの戦闘で殺された。いまはわずかなキャッサバと豆をつくって飢えをしのいでいると訴えた。「ここで戦闘が起きれば、逃げる。終われば、戻る。私たちには選択肢などない。すべてを神の手にゆだねるしかない」

 ションボさんの家の壁には、キリスト教の宗教ポスターを始め、カビラ大統領、オバマ米大統領、ブッシュ前米大統領のポスターがびっしり張ってあった。イラクの故フセイン元大統領のポスターもあったので、なぜ、これを? と聞くと、とたんに笑いころげ始めた。

 「ポスターは関係ないの。壁を覆うためだけ。カビラ大統領だって、今は大嫌いなんだから」。笑い終えたションボさんはそう語った。

 話を聞いていると、杉山正ナイロビ支局長が電話で、M23がゴマから撤退するらしいと教えてくれた。サケの先でM23と政府軍がにらみ合うような形になっていたので、この情報にはほっとした。もし、撤退が始まるなら、ゴマの動きの方が興味深いと思い、引き返すことにした。

 戻ってみると、宿泊しているホテルでM23の政治指導者が記者会見をしている最中だった。撤退することには合意しているものの、色々と条件を並べている。報道関係者以外のサクラも含めて会場は100人以上でふくれあがった。記者会見は、みんなでお祈りをして終わった。

江木慎吾

プロフィール江木 慎吾(えぎ・しんご)

61年生まれ。社会部をへて00年代、ナイロビ、ニューヨーク支局に勤務。バルカン半島、中東、アフリカ各地の紛争取材を経験しつつ、小心さは変わらない。動作が緩慢でのんきに見えるが、気は短い。趣味は散歩。しばしば二日酔い。だめトラファン。

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