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09月23日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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定点観測を始めた理由 @ブジュンブラ

 本当は、このことは書きたくないのです。なら書かなければいいのですが、このシリーズの整合性のためには書くべきなのだと思うわけです。

 今回のコンゴ編を通して読んでいただいた方はところどころ、もって回ったというか、もったいぶったというか、そんな書きっぷりのところがあることにお気づきだったでしょう。たとえば初回、「懐かしい仲間が待っていてくれるはずだった」と書きました。登場するのかと思いきや、その後どうなったのかわからないままになっています。

 実は、登場させようと考えていたわけです。彼は10年前はブルンジ周辺のニュースがあるときに手伝ってくれる助手でした。10年前に今回訪れたゴマにも2人で行っています。その後、朝日新聞とは縁が切れてしまったのですが、彼と今回のコンゴへの旅をしようと考え、誘いました。現地の言葉やフランス語から英語に訳してくれる通訳も頼みたかったのです。

 そう思ったのは、ナイロビでコンゴのビザをとれないことがわかったからです。そのとき、ブルンジやルワンダならとれるかもしれないと思いつき、彼に電話しました。すると、調べてみるといって、折り返し「大丈夫、ブジュンブラのコンゴ大使館でとれる」と電話してくれました。

 読む皆さんもおやじ1人の珍道中にはそろそろ飽きたでしょうし、おやじ2人の珍道中といきましょうか、とまあそんなわけです。では、なぜ今も名前を出さずに「彼」などともったいぶって書くのか。

 その後の経過は書いてきたように、コンゴ大使館に書類の不備をいろいろ指摘され、結果的にコンゴ政府のビザは出ませんでした。ブルンジに来る2週間前から「彼」に必要書類について問い合わせ、出発の5日前にその書類をすべてメールで送り、「もしこの書類で駄目なら、すぐに別のものを用意するので連絡してほしい」と書いて送ってありました。

 彼も「大丈夫」と言っていたので安心してブルンジに来たわけです。

 コンゴ大使館の対応が木で鼻をくくったようなものだったのは、現地の情勢が一気に悪化したからでしょう。でも書類の不備は、彼らにつけいる隙を与えてしまったことになります。

 コンゴ大使館が指摘した最大の不備は「コンゴ内の組織からの招待状がない」ということでした。この招待状をビザの条件にする国がままありますので、気にはなったのですが、彼はそのようなものは必要ないと言われたと連絡をくれていました。

 その招待状をどうするかについて、また彼が「任せておけ」というわけです。コンゴに働いている友人に頼めば書いてくれると言います。その友人というのが、何度か会う約束をすっぽかし、最終的に「書けない」ということになる。

 つまり、珍道中というよりも、冷ややかな空気が流れ始めてしまい、紹介するとしてもこうした話を書かざるを得なくなるので、名前を出すわけにいかないと思ったわけです。といううちに、登場してもらう機会を失ってしまい、記事の整合性が保てなくなってしまいました。

 実は「初回はああいう風に書いたけど、知らん顔をしてしまおうか」とも思ったのですが、読んだある人――というのはお世話になっているフォトジャーナリストの中野智明さんですが――が「会えなかったのですか」とメールで心配してくれて、無視してしまおうなどと考えた不届きを反省しました。

 さて、結局こちらから彼を誘ったので、一緒にコンゴへは行くことにしました。ここでもう一つの問題が生じました。

 彼が体調を崩したのです。最初は季節の変わり目の風邪だと言っていたので、「うつらなければいいな」などと自分のことしか考えていませんでした。

 ブルンジを出るときに「調子が悪いなら、一緒に行くのはやめよう」と持ちかけたのですが、「ぜひ一緒に行かせてくれ」と言われ、もう車も手配したとも言うので、そのまま出発しました。

 どうも調子がよくなっていないのではと思いながら見ていたのですが、彼は「昨日よりずいぶんいい」と毎日言います。その割に食欲がなく、元気もなさそうです。

 コンゴに入るとさらに調子が悪そうに見えます。食事をとってもスープだけ。それもほとんど残してしまう状態になりました。

 「大丈夫。働く」と彼が言うので、負担を軽くしようと考えて「定点観測」をすることにしました。動かなくてじっと座っていられると考えたわけです。

 それでもよくなっていないようなので、もう限界だと感じ、少し慌ただしくコンゴを後にしました。幸いというか皮肉にもというか、彼にあげた抗生物質がきいたのか、コンゴを去ってから次第に元気を取り戻し、ブルンジに戻るころにはかなり回復したようです。でも、早く医者に行くようにとは言いました。

 というのが、記事にも書いた「事情があって定点観測をした」とかツイッターで「もう少しいたかったけど」などと未練がましく書いたてんまつです。

 でも、M23側が出したビザはもともと1週間だけでしたし、M23が去って政府軍が入ってきたらとたんに「ビザなし状態」と見られかねないし、まあ潮時だったのかもしれません。

 ニュースを追う取材ならば、もっと厳しい態度をとっていたでしょう。手伝ってくれる人がダメだから取材ができないというのでは言い訳にもなりません。そこが「風に吹かれて」のずるいところであり、ちょっとだけいいところでもあるのかもしれません。

 それにしても、南スーダンでは運転手が交通事故に遭い、コンゴでは助手が病気になり、「災厄をもたらす風」になっていなければいいのですが。

江木慎吾

プロフィール江木 慎吾(えぎ・しんご)

61年生まれ。社会部をへて00年代、ナイロビ、ニューヨーク支局に勤務。バルカン半島、中東、アフリカ各地の紛争取材を経験しつつ、小心さは変わらない。動作が緩慢でのんきに見えるが、気は短い。趣味は散歩。しばしば二日酔い。だめトラファン。

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