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西への旅、波乱の幕開け @ナイジェリア上空

写真:「アフリカの誇り」ケニア航空のB737の翼=写真はいずれも6日、江木慎吾撮影拡大「アフリカの誇り」ケニア航空のB737の翼=写真はいずれも6日、江木慎吾撮影

写真:おやつのナッツ。思わずビール、といきたいところだけれど、トマトジュースで我慢。塩分の取りすぎ拡大おやつのナッツ。思わずビール、といきたいところだけれど、トマトジュースで我慢。塩分の取りすぎ

 アフリカの風に吹かれようと思ったとき、予定が全部決まっている出張はやめようと決めた。大げさに言えば、多少の苦労やイライラも風のうちと、吹かれてみようと思った。

 今回はコートジボワール、リベリア、シエラレオネを目指す。最初の訪問地、コートジボワールのビザはとったものの、リベリアと、もっとも行きたいシエラレオネはとれていない。リベリアのビザは待てばナイロビでとれたのだが、早く出発することを選んだ。こういうのを愚かな選択という。

 10月にページを立ち上げ、何とか毎日、記事を更新し続けている。中には記事とは言い難いものもあるけれど。だいたい一日1本のペースで書いていて、旅先で1日2本書くこともある。蓄積のおかげで、旅を続けているふりをしつつ、何日かナイロビで次の旅の準備をすることができる。

 準備というのは、汚れた服を洗濯に出し、飛行機のチケットを買い、最低限のビザをとることだ。ちなみに、下着はできるだけ自分で手洗いしている。ガソリン代わりにお酒を体に満たすというのも、準備のうちに入る。

 で、コンゴ編が6日に終わるので、できれば6日にナイロビを出たかった。原稿が出せるかどうかは全くわからないけれど、少なくともシリーズにすきま風が吹かないよう、態勢だけは整えておかなくては。こういうのを捕らぬ狸(たぬき)の皮算用というのかもしれない。少し違う気がするが。

 今回、目指す3国はもはや紛争国から抜け出した国ばかり。でもナイロビに勤務した2000年前後は違った。コートジボワールは、紛争の芽がすでにあった。ナイロビを去った後に状態はいっとき、とても悪くなった。

 リベリアは内戦状態を抜けていたけれど、隣国シエラレオネの内戦に乗じてダイヤを武器と取引していると言われていた。シエラレオネは、アフリカの紛争の悪い特徴をすべて備えたような内戦をくぐり抜けていた。

 というわけで、まずはコートジボワールへ。そこでほかの国に行けるかどうかを探る。ナイロビからは飛行機で5時間半ほどかかる。

 前の飛行機が飛び立ったらこの機の番、という時だった。「荷物を預けた乗客で乗っていない人がいる。安全規定により、荷物を下ろすか、乗客を乗せるしかない」と機内アナウンスがあった。そこから駐機場へ逆戻り。荷物を預けた乗客が来なくて待たされるということは日本でもままあるけれど、飛び立つ寸前になって戻るということはあまりないだろう。

 乗っていない乗客がいないかきちんとチェックせずに出発しようとするからいけない。でも、そんなことはたぶん、アフリカではさほど珍しくない。以前なら、前にも書いたように預け入れた手荷物を飛行機に乗る前に自分で確認する仕組みになっていたが、機械化が進んでそれをする便が少なくなった。効率化を目指した結果なのに、ちゃんと運用しないとこういうことになる。

 つい先日、テレビで映画「三銃士」をやっていて、見るとはなしに眺めていた。「みんなが1人のために、1人がみんなのために」が合言葉だ。今回はまさに「みんなが1人のために」。本当なら、そんなやつ、荷物をさっさと下ろして置いてゆけと言いたくなるが、荷物を探す方がよほど時間はかかる。乗せた方がみんなのためになる。

 それにしても、どんな様子で現れるのだろう。自分なら、申し訳なさと恥ずかしさで身を小さくして、小走りで飛行機に駆け寄るだろう。どんな顔をしていいのかわからなくて、薄ら笑いを浮かべるだろうか。帽子を目深にかぶって顔を隠そうとするかも。「1人がみんなのために」の思想が尊ばれる日本では、それが普通の反応かもしれない。

 窓の外を見ていたら、荷物を持ったケニア航空の女性が、地上を足早にやってくる。その後ろから、のっそりのっそりと、急ぐ様子もなく大柄の女性が歩いてきた。ケニア航空の女性が時折、振り返り、早くというようなしぐさをするが、全く動じる様子がなく、マイペースを守っている。

 太刀持ちだか露払いだかのケニア航空の女性がちょこまかしているけれど、横綱の土俵入りの貫禄だった。何があったかわからないのでめったなことは言えないものの、待たされる身とすれば、いったいどういう神経をしているのだろうと思う。機内で自分の席を通り過ぎたら、ひとにらみしてやろうと思って待ち構えていたら、一番前に座った。ファーストクラスはないので、ビジネスクラスだ。腹立たしさがいっそう募る。きっと自分を置いて行こうとする方が悪いぐらいに思っているのだ、あの顔は、と悪意が膨らむ。

 ちなみに、アフリカの名誉のためにいえば、黒人ではなかった。何が名誉なのかはわからないけれど。

 いけない、いけない。お国柄というのはあるかもしれないが、アフリカだからどうだとか、どこの国の人だからどうだとか、レッテル張りはよろしくない。だいたい、ナニ人かなんてわからないし。旅ののっけからこんなのでは、どんな風に吹かれるやら。

 というわけで、1時間遅れで出発し、これを機内、ちょうどナイジェリアの沖合上空で書いている。先日、キガリで会った佐藤芳之さんのケニア・ナッツ・カンパニーのナッツがおやつに出たところだ。

 GPS装置があってよかったと思う数少ない瞬間だけど、どんどん位置が変わって、うまく記録できない。

     ◇

■12年前に書いた記事から

 全く偶然だけど、12年前にアビジャンで、同じようなレッテル張りに関する記事を書いていたのを思い出した。飛行機と、トマトジュースが登場するのも、偶然の一致。同じことを繰り返していることに、反省するしかない。

 

「彼ら」の意味は(特派員メモ・アビジャン)

 

 アフリカの航空会社の便に乗っている時だ。隣席のイタリア人が、乗務員を呼んだ。「彼のトマトジュースはどうした」

 「彼」は私だった。飲み物のサービスで頼んだのだが「後で持ってくる」と乗務員が言ったままになっていた。イタリア人の抗議でトマトジュースが現れ、礼を言ってうまそうに飲んだ(つもりだ)。再び礼を言うと、彼は「彼らには何度も何度も言って、初めて少しだけ事態が良くなる」と話した。

 親切な彼は、サービスの良くない航空会社を指して「彼ら」と言ったに違いない。でも、アフリカの人たちを難じる「彼ら」を聞くことが、ここではあまりに多い。いわく「彼らはうそつきだ」「彼らは怠け者だ」。恐ろしいことに、自分も使う。非黒人の押しつける「彼ら」のイメージと、アフリカは闘っているといえるかもしれない。

 コートジボワールのアビジャンで、金銭をめぐっていら立つことが続き、「彼らは何でもカネ、カネだ」といろんな人に話した。あっちこっちで「釣り銭がない」と言われて多めに払わされた後、また同じ目にあって「彼らはカネ、カネだ」と独りごちた。隣に立っていた黒人男性がふいに「これを使ってください」と小銭を差し出した。意外で、自然で、断れずにもらってしまった。

 「彼ら」に簡単にレッテルを張って見下すようにしていた後ろから、何かで殴られたような、気持ちのいいような痛みを感じた。

(コートジボワール)

江木慎吾

プロフィール江木 慎吾(えぎ・しんご)

61年生まれ。社会部をへて00年代、ナイロビ、ニューヨーク支局に勤務。バルカン半島、中東、アフリカ各地の紛争取材を経験しつつ、小心さは変わらない。動作が緩慢でのんきに見えるが、気は短い。趣味は散歩。しばしば二日酔い。だめトラファン。

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