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汗だくのXマスソングと渋滞…平和の証し@フリータウン

写真:進むことはままならず=写真はともに19日、江木慎吾撮影拡大進むことはままならず=写真はともに19日、江木慎吾撮影

写真:立ち往生したところの周りは、家もまばら拡大立ち往生したところの周りは、家もまばら

写真:ところ狭しと並べて拡大ところ狭しと並べて

写真:フリータウンの渋滞。車を歩行者とバイクが取り囲む拡大フリータウンの渋滞。車を歩行者とバイクが取り囲む

 そう、ドタバタはリベリア・コートジボワール国境でおしまいにしたはずだった。シエラレオネに着いた今、煩わしい手続きは残っていない。ただ、情報省で記者登録をしなければならなかったので、19日の朝はそれから始めた。

 砂ぼこりの立つ暑い街に、雪のクリスマスソングが流れる。官僚ならずとも仕事をしたくなくなる時期だろう。でも、手続きの担当者が役所に来ていないという理由で8階まで階段を2往復させられたあげく、「明日また来い」と言われたときはカチンときた。シエラレオネは昔からこの記者登録が煩わしい。

 登録か完了しないままだけど、正味4日しかないので、動くことにした。行き先はログベリ。12年前、共同通信の記者と2人、緊張の中で向かったところだ。そのとき、そこが内戦の前線だった。

 道中の景色などはあまり覚えていないけれど、12年の年月がどうこの国を変えたのかを見る出発点にしようと考えた。

 手配してもらった車でフリータウンを出発した。この街は山と海に囲まれていて、その山の上の方に新しく、邸宅といえる家が次々と建っている。幹線道路は渋滞するというので、整備中の裏道を行くことにした。

 すぐに後悔した。土ぼこりで前が見えないほどだ。それが入ってこないように窓を閉めたが、空調がきかず、蒸し風呂状態に。

 チンパンジーのサンクチュアリーのある山と森の道にさしかかったら、道が渋滞している。全く動かないので様子を見に降りると、前方の崖沿いでダンプカーが軟らかい土にタイヤをとられ、横転しそうな姿勢で道をふさいでいた。

 現場で道路工事にあたっていたショベルカーのショベルでダンプカーを押しだそうとしている。現場監督は中国人のようで、指示を飛ばしている。渋滞の中の車両からも中国人が降りてきて、現場監督と中国語でやりあっている。

 アフリカで中国語が飛び交うのは、不思議でもなんでもない光景になっているのだろう。

 この現場に1時間半ほど立ち往生した。動き出したのはいいが、蒸し風呂状態はなお続いた。それが終わったと思ったら、車が妙な振動と音を発し始めた。まだ道のりの半分も行っていない。運転手が「途中で故障するかもしれない。戻って、別の車を探そう」と言い出した。

 確かに不安になる振動だった。でも、これから戻って車を変えていたら目的地のはるか手前で日が暮れてしまう。悩んだ末、危険だという運転手の勘を信じ、きょうは行くのをやめてフリータウンに戻ることにした。

 砂ぼこりはごめんなので、幹線道路を帰った。すると市内に入るところからものすごい渋滞になった。変な言い方だけど、ナイロビに勝るとも劣らぬ渋滞だった。

 回避しようと脇道にそれると、細い道の両側に車がびっしり駐車されている。その隙間に物売りの小さな店が出て、さらにそこを避けるように移動しながらものを売る人や、単に歩いている人で、身動きができないような状況だった。

 ビスケットやチップス、サッカーボール、DVD、タオルと、とにかく色んなものを売って歩いている。そこをクラクションを鳴らしながら進む。ついに、駐車しようとした車を避けようとしたところ、その間をすり抜けようとした男性の脚を挟み込んでしまった。

 イタタッと、男性が顔をしかめる。「なんでこんなところを抜けようとするんだ。今度からはちゃんと待て」と、謝りもせずに運転手は前を向く。ジングルベルが流れている。物売りがチーズのお菓子を売りにくる。この暑いなかで、買う人がいるのだろうか。

 どの国に行っても、渋滞がひどい。紛争や緊張状態のさなかには、人波も渋滞もなかった。渋滞とは、平和を手に入れた証明でもあるわけだ。

 300メートル進むのに1時間以上かかり、日が傾いた。きょうは何もできずに終わりだなあと思ったら、ついに車が動かなくなった。市内でよかった。もしあのまま目的地に向かっていたらと思うと恐ろしい。

 どうも今回は道路と車がバタバタを招くなあ。ホテルまでタクシーを捕まえて戻ると、もう夜の8時を回っていた。

     ◇

■12年前に書いた記事から

 12年前の5月に書いた記事です。この場所を目指したのですが……。

《拠点目指す政府軍、サンダル履き姿も シエラレオネ前線ルポ》 

 シエラレオネ政府軍と反政府武装勢力「革命統一戦線(RUF)」がにらみ合う前線のログベリに22日、入った。RUF支配地にある交通の要衝だったが、前日の朝、政府軍が制圧した。政府軍の歩兵約200人がさらに西へと向かっていた。

 「昨日〇9〇〇(午前9時)に制圧した」。Tシャツ姿のコンテ中尉は無表情に話した。戦闘は一時間足らずで決着がついた。伏兵が攻撃してきたが、間もなく退却した。双方とも死者はなかったようだ。

 政府軍兵士はかけ声をかけて動き始めた。サンダル履きの歩兵がいる。手製のひもで銃を担ぐ兵士もいる。退却したRUFが、どこまで支配下に置いているかを確かめに行くという。約18キロ西のポートロコにRUFの拠点がある。

 RUFは一時、首都フリータウンに迫っていたが、2週間ほど前から後退を続けている。ログベリはフリータウンから約90キロ北東にある小さな村だ。南へ約30キロのマシアカでは、先週まで激しい攻防が続いた。

 小さな丘を上ったところで道が東西に分かれている。政府軍はこの分かれ道の周辺で7人の遺体をみつけた。死後5日ほどで現場に埋めた。一人のパスポートが残っていた。軍服姿の若者の写真に「PETER BANDA」の名前があった。国連シエラレオネ派遣団(UNAMSIL)のザンビア兵だった。

 分かれ道に来る途中、記者の車に銃を持った政府軍兵士2人が「護衛のため」と乗り込んでいた。一人はコンテ君。19歳というが、11歳のころから戦っているという。「君にとって楽しいことって何?」と聞いてみた。「今は、任務が成功することしかない。戦争が終わったら、ほかの楽しみを考える」。少し戸惑い気味に、答えが返ってきた。

《戦場のチョウ(特派員メモ・ログベリ)》

 戦場で欧州の2人の記者が死んだ。シエラレオネ西部のログベリ近くでのことだ。彼らが反政府勢力に襲われた2日前、そのログベリにいた。政府軍が反政府側の拠点だった村を制圧した翌日だった。

 かつてボスニア紛争を取材して感じたのは、明確な前線のない怖さだ。近くに砲弾が落ち、そばを弾が飛ぶ。どこから来るか、全くわからない。

 今回も、政府軍が押さえたのは1本の道だけで、周りには反政府勢力の支配する密林が広がっていた。待ち伏せされたら終わりだ。ずっと背筋の寒い思いがした。一緒にいた記者が「行こうよ」と言わなければ、途中で引き返していた。

 亡くなった2人は、さらに奥に入っていた。戦場を渡り歩いた人たちだ。ためらいはなかったに違いない。取材すべき事実があれば、行くのは当たり前だったのだろう。

 異国の戦場に倒れた彼らが、最後にみたのは一体何だったのか。一つの光景が頭に浮かぶ。

 ログベリの村はずれを歩いていたとき、群舞する40〜50匹のチョウと出あった。モンシロチョウより少し大きい、白いチョウだった。ふと、甘い香りをかいだ気がした。戦場はみつのように、多くの人を引きつけるのだなと思った。

 何かのために、戦う人を。何かのために、それを伝えようとする人を。

江木慎吾

プロフィール江木 慎吾(えぎ・しんご)

61年生まれ。社会部をへて00年代、ナイロビ、ニューヨーク支局に勤務。バルカン半島、中東、アフリカ各地の紛争取材を経験しつつ、小心さは変わらない。動作が緩慢でのんきに見えるが、気は短い。趣味は散歩。しばしば二日酔い。だめトラファン。

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