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09月24日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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いつか来た道、よみがえる記憶、背筋の寒気 @ログベリ

写真:幹線道路沿いのパラソルが誘う=写真はいずれも20日、江木慎吾撮影拡大幹線道路沿いのパラソルが誘う=写真はいずれも20日、江木慎吾撮影

写真:12年前も、この建物は同じように朽ち果てていた拡大12年前も、この建物は同じように朽ち果てていた

写真:12年前はこの橋を渡ったら、自分たちの責任だと言われた拡大12年前はこの橋を渡ったら、自分たちの責任だと言われた

写真:ログベリ・ジャンクション拡大ログベリ・ジャンクション

 また記者登録から一日が始まる。朝10時に来いと言われたが、8階にある情報省の事務室は、10時には鍵も開いていない。

 担当者は気のいいおじさんで結局、1時間ほど待って登録はしてくれたのだが、記者証に印を押す段になって、なぜか冷蔵庫を開けている。インクを判につけるマットが乾燥して使えないため、冷蔵庫にあった水をかけて何とかしようとしたようだ。

 結局だめで、ほかの事務室から借りてきて押してくれた。ここで記者登録する記者が本当にいるのか、疑わしくなる。

 ともあれ、これで取材活動の障壁はなくなった。きょうは、200キロほど離れたマケニという町に向かうことにした。中間点あたりに前日、目指したログベリがあるので、何もできなかった一日を取り戻そう。

 だが、やはり市内を抜け出すのに1時間以上かかってしまった。クリスマス前ということもあるのだろう。平日の午前中なのに、町に人があふれている。渋滞につかまり、それを抜けようとして脇道にそれては、別の渋滞に巻き込まれる「渋滞の脇道連鎖」に落ちてしまう。

 わずかでも進む余地があると、クラクションをならしまくる。短く乱打。長く脅すように。サッカーの試合のボール支配率風に言えば、鳴らしている時間とそうでない時間が五分五分に感じられるけど、まあ実際は30%と70%といったところだろう。車の周りを取り囲まれていて、鳴らすたびに「プップップうるさいわね」「動けないのがわかるだろう」と反応が返ってくるので、肩身が狭い。

 1時間半で市内を抜け出すと、この運転手も暴走を始めた。2歳の孫がいると言っていたが、もう少しご自愛くださいと言いたいところだ。

 ログベリに近づくと、少し、12年前の記憶が戻ってきた。いったん押し込められたシエラレオネ政府軍が当時、攻勢に転じてマシアカの町まで確保していた。そこから先は反政府武装勢力の革命統一戦線(RUF)の支配地だった。

 いろんな武装勢力が戦いに加わっていて、それに加えて政府軍、それに国連軍が道路に検問所を設けていた。金を要求されると面倒なので、たばこと、パンを何斤も買い、要求されるとカンパと称して配った。

 マシアカから十数キロ離れたところに川があって、橋のたもとが最後の検問だった。「ここから先は、自分たちの判断で行ってくれ。責任はもてない」と言われ、背筋が寒くなったのを覚えている。

 橋は昔と同様に交互通行のまま残っていた。道路はすごくよくなっている。橋を渡ってからの10キロちょっとを、昔、すごく長く感じた。いまよりずっと道が細く、方々に穴があいていた。その穴の手前で車が減速すると、「あまりスピードを落とさないで。狙われるかもしれないから」と心の中で思った。周りが見渡せるところにくれば狙われそうな気がして、周りに木々が立ちこめていると、伏兵があるような気がした。

 ログベリ・ジャンクションのラウンダバウトが見えてきた。通信用の鉄塔は昔もあったが、もっと低かった気がする。このラウンダバウトで12年前は止まった。チョウが乱舞していた。それが印象的だった。武装勢力に殺されたとみられるザンビア兵のパスポートが落ちていたのも、ここだった。

 記憶というのはあいまいで、ラウンダバウトのすぐわきに小さな警察署があったのも覚えていなかった。

 わずかに店があるだけの、村とも言えないようなところだったが、店は増え、大きな看板が立っていた。チョウは姿を見せなかった。

     ◇

■11年前に書いた記事から

 

《禁じられた遊び(特派員メモ・フリータウン)》

 

 最初は、さして気にも留めなかった。

 10歳ぐらいの子どもが草を結んだひもを道路に渡している。車が近づくと運転手に向け手を差し出す。止まる気配がないと、ひもが切られないよう仕方なく足元に落とす。

 シエラレオネの首都フリータウンから北東へ向かう幹線道路には、約200キロの間に数十の検問所がある。国連平和維持軍、警察に加え、地域での力関係によって政府軍、民兵組織、反政府武装勢力が設けている。国連と警察を除くと、何を検問するでもなく「通行税」を要求する。子どもは、それをまねしている。

 10年越しの内戦で、子どもはいや応なしに大人の「負の世界」に引きずり込まれてきた。この内戦では、手足を切り落とす残虐行為が問題になった。最も残虐な行為の数々が子どもの手によっても行われた。10歳になるかならないかの子どもが武装勢力に拉致され、兵士に仕立てられた。

 子どもの「検問所」が単なる遊びなのか、実際になにがしかを渡す大人がいるのかはわからない。10年の苦しみをへてなお、大人が子どもの反面教師でしかない光景。道路に渡した切れそうに細い草のひもに、あどけないというにはあまりに悲しい「禁じられた遊び」をみた気がした。

江木慎吾

プロフィール江木 慎吾(えぎ・しんご)

61年生まれ。社会部をへて00年代、ナイロビ、ニューヨーク支局に勤務。バルカン半島、中東、アフリカ各地の紛争取材を経験しつつ、小心さは変わらない。動作が緩慢でのんきに見えるが、気は短い。趣味は散歩。しばしば二日酔い。だめトラファン。

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